がん化学療法看護認定看護師として、がん治療の最前線で患者さんをサポートしていたところ自らも乳がんに罹患した南出さん。前編は抗がん剤治療で感じたこと、経験したことをお話いただきました。後編は実体験をもとにした映画製作と、その内容をお届けします。
プロフィール
南出美砂さん(40代) 大阪府
〔家族構成〕娘、息子、と3人暮らし
〔がんの部位〕乳がん
〔取材時の状況〕手術→抗がん剤→放射線→ホルモン療法中
「脚本書いてみたら?」パートナーからの提案
パートナーとは趣味の映画をきっかけに知り合いました。自分の病気や立場のことをブログやSNSで発信していたのですが、それを見て「脚本書いてみたら?」って。彼は映画監督をしているので、一緒に映画をつくってみようと言ってくれたんです。
病気のことをあまり人に言いたくなかったんですけど、治療が一段落して、私の経験でお役に立てることがあるんじゃないかと考えました。がん化学療法看護認定看護師でがん患者、この両方を経験したからこそ伝えられることがあるかもって。
でも「脚本書いてみたら?」と言われても…私は看護師ですし、脚本のプロじゃないので、できるかなぁって不安でした(笑)とりあえず脚本に関する本を何冊も読んで、思いの丈を素直に書いてみました。
撮影はいま自分が勤務している病院で行いました。理事長にお願いするとき、映画の企画と自分の想いをお話したら、ものすごく快く受け入れてくださいました。それで、日曜日のあまり人がいない時間を使わせていただいたんです。看護師の仕事をしながら、仕事が休みの日は撮影という生活で、2ヶ月くらい休日がなかったですね(笑)
患者のリアルなエピソードを散りばめた作品に
映画のエピソードで、主人公が周囲の言葉に傷つくシーンがありますが、実際に私が体験したことです。
手術で仕事を休む時に「誰が犠牲(代わりに出勤)になる?」という会話があったのですが、私のために誰かが犠牲になるんだ…とショックを受けて。相手に悪気がなくても、それが一番、傷ついたんですよ。
普通の人なら「はいはい」って聞き流せることが、治療中はすごく傷ついてしまったりするので、私も看護師として患者さんにお話するときは気を付けようと思いました。
ケモブレインじゃないですけど、がん治療中はうっかりミスをしたり、思考力が落ちたり、マルチタスクが出来ない。
そういうのも、あんまり周りから気づかれないっていうか。普段と、治療前と同じように働けると思われてるんだなぁと。周りの配慮が足りない、というわけでは決してなくて、がん治療中はそういう状態だと、この映画を通して知ってもらえたらと思います。
どん底があっても、また元気で頑張れる
がんを体験した、という話ではありますが、同じ病気の人だけじゃなく、いろんな人に観て知っていただきたいです。だから楽しめる、エンターテインメント要素がある映画にしようと思いました。そのなかで自分に起こったことや感じたことを、なるべくリアルにセリフに盛り込んでいます。
「RevivaL 〜蘇生〜」というタイトルは「起死回生」とか「再生」という意味から発想しました。私はがんになったことでつらい思いもして、どん底に突き落とされた気持ちにもなりましたが、それでもこうやっていろいろなことに挑戦しています。どん底の中にも幸せはあるんです。また元気で頑張れるぞ、ということを伝えたくてこのタイトルに決めました。
いま治療に向き合っている方、あるいは私と同じように治療を終えた後も傷ついていたり、不安を抱えている方が多いと感じます。そんな方に目線を変えて、少しでも元気を届けられる作品であったら嬉しいです。
今回は私の話を脚本にしましたが、今後は違う物語を手がけてみたいと思っています。できるできないかではなく、とにかくやってみる。「いま」自分がいることに感謝して、有効に使っていきたいと思います。
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MISAさんが脚本を手がけた「RevivaL 〜蘇生〜」は公開を目指して制作中です!
公開情報は こちらをチェック してください。
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