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がん治療はどうだった?体験者のリアルボイス MIHOさん

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レストランで働いていたMIHOさんが、バスタイムにご自身で見つけた“固いもの”。病院へ行く前に考えたこと、副作用のこと、ウィッグを選ぶ際に譲れなかったこと、支えになったこと。それぞれの場面で感じたことを、とても丁寧に話してくださいました。

プロフィール
MIHOさん(45歳) 北海道
〔家族構成〕母と二人暮らし
〔がんの部位〕乳がん
〔取材時の状況〕手術→放射線→抗がん剤→経過観察中

もこもこの泡の中に現れた“固いもの”

胸にしこりを見つけたのはバスタイムのときでした。もこもこの泡で素手で身体を洗う、というのが当時のマイブームで、泡のなかでふと固いものに触れたんです。翌日も、その次の日も、固いものはずっとそこにあるので気になってネットで調べました。このしこりのようなものは良性か悪性か、結局自分ではわからないので病院へ行きました。
もし、悪性だったときにショックを受けないよう、あらかじめ自分の中で最悪の想定をしていたんですけど、いざ、がんの告知を受けたときはやっぱり悲しくなりましたね。

もこもこの泡の中に現れた“固いもの

病院を選ぶ際に重視したのは、まず近場であること。がんの治療を考えると、自宅から通いやすい場所がいいだろうと思いました。さらに職場とのアクセスも考慮し、その中でいい先生のいる病院を選びました。最初はマンモグラフィーとかエコーとか触診とか診てもらって、なんとなくがんの可能性が高いということで翌週、MRIやCTなど精密検査をしました。その診断結果をもとに、がんの告知をされたのは2週間後くらいだったと思います。

インタビュー MIHOさん

告知された次の日に職場の店長に伝え、他のメンバーには手術の前日に全員に手紙を書いて、ロッカーに入れました。復職してから助けてもらうこともあるだろうし、変にギスギスするのも嫌なので包み隠さずに。それで楽になった部分も多かったですね。

味覚の変化は、200メートル後ろから味が追いかけてくる

抗がん剤の副作用は、けっこう大変でした。もともと消化器系が弱くて、胃潰瘍になってしまって。投与した翌日からもう寝られない、横にもなれない、立ってもいられないくらい胃が痛くて、病院に駆け込んで点滴を打ってもらいました。抗がん剤は身体の弱いところに出るらしいんですけど、毎回胃が痛くなり次の日に点滴を打っていました。

200メートル後ろから、味が追いかけてくる

爪も抗がん剤を2回、3回と重ねていくうちに根元が紫というか黒っぽくなって、しかも凸凹しているので最初は日焼けとか、あるいはどこかにぶつけたのかな?と思っていました。その症状が副作用だということを知ったのは後からです。爪切りじゃなく、ハサミで切れるほど脆くなってしまって。仕事で洗いものをしたり、レジを打つだけでも割れてしまう状態が1年くらい続きました。

インタビュー MIHOさん

味覚障害も…ありましたね。水を飲んでも鉄のような、鉛のような味がしていました。水に代わるものをいろいろ探して、ほうじ茶なら大丈夫だったので、歯磨きもほうじ茶でしました。
全体に味が濃く感じてしまうというか…でも甘さは逆に何も感じなくなってしまったんですよね。今まで大好きだったチョコレートや甘いお菓子も、はるか遠く200メートル後ろからなんとなく追いかけてくる感じ。確かこんな味だったような、うん、こんな味かもね…が後からきて、美味しいと思って食べられたものはほとんどなかったです。
実家だったので母が消化にいいもの、栄養のバランス、味つけを工夫してくれて、本当にありがたかったですね。

髪だけは譲れない、という思いで選んだウィッグ

副作用でいちばん不安だったのは脱毛です。当時は腰ぐらいまでのロングで、自分の髪型がとても気に入ってました。そのヘアスタイルができなくなる、髪がなくなることがいちばんつらかったです。
ウィッグは治療することが決まった時点で、買おうと思いました。とにかく品質のいいものが欲しかった。復職した時のことを考えると、接客業なのでお客さんから気づかれるのは絶対嫌。それに今までずっとロングヘアでアレンジやファッションを楽しんできたので、髪だけは譲れなかった。絶対にいいもので、長く使えるもの、治療が終わってもイメチェンで使えるおしゃれなものを!と心に決め、お店を選びました。

髪だけは譲れない、という思いで選んだウィッグ

スヴェンソンのウィッグを選んだ理由は、気に入ったものがすぐに見つかったからですね。
髪型の種類だけじゃなく、髪質が選べたり、ヘアアレンジができたり、選択肢がすごく多かったんです。私はロングだったんですけど、いろいろ考えて肩にかからないくらいのボブを選びました。長かったのが短くなって、「若くなったね」「可愛くなったね」「もうずっとその長さでいいよ」とお客さんに言われたりして。お客さんは脱毛していることを知らないので、全くバレずに誉められてうれしかったです。
やっぱりおしゃれだけを追求したウィッグだと、根本の部分が黒くて地肌じゃないってわかったり、髪質も明らかに人形の髪の毛みたいだったりしますよね。そこが全然違う、本当に気づかれませんでした。

インタビュー MIHOさん

治療が始まっちゃうと、どのタイミングで自分が具合悪くなるのかわからないので元気なうちに、髪があるうちに、決めたのがよかったと思います。自分が欲しいもの、好きなものを選んでおくと気分も上がるし「髪が抜けてもウィッグがあるから大丈夫」って思えるので。これ、大事です。

治療中ココロの支えになったこと、なっていること

治療中、主治医の先生と看護師さんには本当に励まされました。優しくて穏やかな先生で「あなたの場合、順調に治療を進めていけば大丈夫だよ」って言ってもらえたので、安心してお任せできたんです。担当してくれた看護師さんも年齢が近かったこともあり、いろんな話をしてくれました。「自分の好きなこと、楽しいことを見つけて治療を乗り越えていきましょう」と言ってくれて、すごく元気をもらいました。

治療中ココロの支えになったこと、なっていること

音楽にも助けられる部分がたくさんありました。アイドルもアーティストも好きで、もともとライブとかコンサートにはよく行ってたんですけど、治療中もいっぱい勇気を受け取りました。最近、推し活(自分のイチオシを応援する活動)を始めたんです。藤井風さんが好き。彼の歌を聞いているとがんばろうって思えて、推しです!

インタビュー MIHOさん

がんを体験して、強く感じるようになったのは生きていることへの感謝。
バスタイムにもこもこ泡の中で発見できた自分もすごいなと思うんですけど、治療してもらって、いろんな人に支えられてその結果、いまこうして元気でいられる。推し活したり、美味しいものを食べにも行ける。これはもう、感謝しかないです。

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