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がん治療はどうだった?体験者のリアルボイス AKEMIさん(後編)

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妊娠と同時に乳がんの告知を受けたAKEMIさん。前編ではその経緯と出産までの治療、その時々で考えたことを話してくださいました。後編では出産後の治療…抗がん剤やホルモン療法について、心の変化について、そしてまわりへの伝え方について聞かせていただいた様子をお届けします。

前編はコチラ

プロフィール
AKEMIさん(40代) 東京都
〔家族構成〕夫、息子と3人暮らし
〔がんの部位〕 乳がん
〔取材時の状況〕手術(妊娠4ヶ月)→抗がん剤→(出産)→抗がん剤→放射線→ホルモン療法→経過観察中

脱毛しても、いずれ髪は戻ってくる

私が投与した抗がん剤は、髪も、爪も、皮膚もすべてに副作用が出ると言われているものでした。でも、結果的に症状が出たのは髪だけだったんです。味覚も平気だし、吐き気もないし、爪も大丈夫。まつ毛も眉毛も抜けないのに、髪だけが抜けました。

花瓶に入っている花

他の患者さんから「抗がん剤を投与して、2〜3日後にピリピリしたら抜けるよ」と聞いていたので、頭皮がピリッとしたときに「あ、来た!」と思いました。そうしたらやっぱりパラパラ抜けて。ショックを感じるというより、家じゅうに散ってしまう髪のお掃除はどうしたらいいかな、ヘアキャップをかぶればいいか、と対策を立てるのに忙しい感じ。

脱毛で気持ちが落ち込むこともあるし、抗がん剤をやらなくても…と病院の先生は言ってくれたんですけど、数%でも再発のリスクを減らしたかった。それに脱毛しても、いずれ髪は戻ってきますし!

AKEMIさん

ウィッグは脱毛する前に、一応用意していました。メーカーは覚えてないんですけど、病院にカタログがあったところで、結構いいお値段でした。でもいざ着けてみたら、しっくりこない。後になって自分で調べてみると、種類もメーカーもいろいろあるんですよね。安いものをネット通販で買ったりもしたんですけど、モデルさんが着けているのを見ていいなと思っても、同じようにはいかない。着け方が悪いのか?何かコツがあるんじゃないか?と試行錯誤しました。
当時はスヴェンソンの通販サイト(PreSta)のように試着サービスもなくて、着けてしまったら返品もできない。けっこう賭けですよね。ファッションウィッグも、医療用ウィッグも、最終的には5つくらい持っていて、シーンに合わせて使い分けていました。

「母乳での授乳」が叶えられた2週間

授乳は2週間だけできたんです。抗がん剤を投与中はもちろんですが、投与後の薬が体内から抜けるまでの数ヶ月間は授乳できません。私は出産の前後に抗がん剤をしたのですが、出産予定日から逆算して3クールで一旦やめました。先生が「生まれてすぐは授乳したいでしょうから」って調整してくださって、出産後2週間だけ母乳をあげることができました。

赤ちゃんの手を握る様子

その後に4クール目の抗がん剤を投与するため、母乳を抑える薬を飲みました。そうしたらピタッと止まって。それはそれで複雑な気持ちになったんですけど、母乳をあげられたのはやっぱりよかったなと思いました。先生の気遣いがとてもありがたかったです。

ベビー用品

抗がん剤のあとは放射線、そしてホルモン療法をしました。ホルモン剤の副作用として、更年期のような症状が出ると一般的に言われているんですけど、私は何も出なかった。心も変わらない。というより副作用でイライラしていたとしても、普段のイライラの延長だと思っちゃうタイプなので、症状が出ても気づいてなかったのかもしれません(笑)

子どもへの伝え方

子どもには少しずつ話しています。伝えるタイミングは時期を選んで、慎重に。あまり小さいときに言っても理解できないだろうし、かといっていろいろわかってくると「がん=死んじゃう」というイメージを持つこともあるだろうから、それもどうなのかなと。

病室に置かれた花

以前から「手術してたんだよ」「入院してたんだよ」という話はしてました。というのも、手術をした日というのが実は2011年の3月11日(東日本大震災)だったんです。手術は12時くらいに終わって、頭がボーっとして痛くて寝返りがうてない状態で。術後に胎児の心音確認できてよかったね、というタイミングで激しく揺れはじめました。私は動けない状態なので、このままだとベッドで避難するのかな、と頭の中で情景を思い浮かべてました。

手をつなぐ親子

震災の話をするとき、あのときこうしていた、という話に自然となりますよね。その流れで手術や入院のことは話してましたが、それが「がん」ということを伝えたのは最近です。まわりの人の影響を受けずに、ある程度自分で考えられるようになったと思ったので。

がんを体験して思うこと

妊娠〜出産と治療、同時進行のなかで病院の存在はすごく大きかったです。医療者の皆さんに診てもらっている、ケアしてもらっている、という安心感があり、行くたびに「私、治ってるんだ」という気持ちになれた。それぐらい信頼していたし、心の支えでした。
胎児が育つ様子が見られるのも嬉しかったんですけど、検査ひとつとってもしっかり見守られている感じで。出産後、放射線治療で毎日病院へ通ったんですけど、行くのが楽しみでした。

バッグを持っている女性

がんを経験した多くの方が死について考えると思うんですけど、私も目の前に2人分の生と死が見えたんですよね。私とお腹のなかの赤ちゃん。それでやっぱり日々をていねいに生きたい、無駄に時間を過ごしたくないと強く感じるようになりました。

悩んだりするのは大事な時間なので、無駄ではないと思うんですけど、イライラしたり腹をたてたりする時間はちょっと無駄かなと。会社でも何かイラっとすることがあっても「イライラしている時間はない」と気持ちを切り替えて過ごしています。これは以前はなかったこころの変化ですね。いまは子どももいて、なおさら忙しい状況なのでネガティブなことに時間を使うのはもったいないと思います。

時計

がんを体験してから「最期のときに、私は自分の人生をどう思うかな?」とよく想像します。死ぬ間際に「あんなに働かなければよかった」って思わないよう、働くのはそこそこにしようとか(笑)「もっと子どもと接していれば」と思うくらいなら、いま接しようとか。そう思うようになりました。

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