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がん治療はどうだった?体験者のリアルボイス AKEMIさん(前編)

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38歳の誕生日、妊娠と同時に乳がんの告知を受けたAKEMIさん。出産と治療の選択について、妊娠しながらの抗がん剤について、出産後の治療について、副作用について…「妊娠期乳がん」という珍しい体験を話してくださいました。
前編は出産までのこと、後編は出産後の治療や感じたことなど、前後編でお届けします。

プロフィール
AKEMIさん(40代) 東京都
〔家族構成〕夫、息子と3人暮らし
〔がんの部位〕乳がん
〔取材時の状況〕手術(妊娠4ヶ月)→抗がん剤→(出産)→抗がん剤→放射線→ホルモン療法→経過観察中

38歳の誕生日に「妊娠です」と「乳がんです」

「しこりがありますね」と言われたのは妊娠する2年くらい前、会社の健康診断でした。その時は経過観察してください、とのことだったので半年に1回の頻度で検査に通っていました。そこから2年後に妊娠して、ちょっと胸に違和感あるなと思って伝えたところ、もう一度検査という流れになって…結果、がんでした。

がんの告知を受けた同じ日に、妊娠の検査にも行ったんです。午前中に産婦人科で「妊娠です」と言われて、午後に乳腺外科で「(がん)陽性です」って。しかもその日はちょうど38歳になった誕生日でした。

バースデーケーキ

でも、そのとき乳腺外科の先生が「乳がんでも妊娠を継続しながら治療できますよ」とはっきり言ってくれたんです。それで「あ、できるんだ」って、先生のひとことで落ち込まずにすみました。もしもあのとき、ネガティブなことを言われていたらおそらく帰りの電車の中ですごく泣いたり、落ち込んだり、あるいは怒ったり…感情が乱れていたと思います。あのときの先生の言葉で落ち着いていられました。

空

2年間がんを抱えていたことになるので、告知を受けたときは検査に通っていた病院に対して一瞬、マイナスな感情が湧き上がりました。誤診だったんじゃないか、もっと早くわかっていれば、って。でも、一瞬です。現実はそれ以上考えている時間がなくて「次に何をしよう」という思いでいっぱいでした。

スマートフォンを見る女性

「妊娠継続しながら治療できますよ」って医師には言われたけれど、じゃあそれができるのはどこの病院なんだろう、どうやって調べよう、診断書も書いてもらわなきゃ、仕事はどうしよう…考えなきゃいけないことがいっぱいで、感情を持ち出す時間がなかった。これが正直なところです。

治療と出産、2つを叶えるために選んだ病院

治療と出産、この2つを叶えるための病院探しがはじまりました。妊娠の検査と乳がんの検査を受けた病院は別だったんですけど、出産も治療も同じ病院がいいだろう、ということで妊娠の検査を受けた総合病院へ通うことにしました。

病院

でも、その病院の産婦人科の先生からは母体を優先し、がん治療をしっかりするために「今回は(子どもを)諦めましょう」と言われて。逆に同じ病院の乳腺外科の先生は「がん治療しながら妊娠を続けましょう」という意見で。どちらの先生も間違ったことは言ってないんですけど、院内で意見が割れるのは患者にとってすごく迷ってしまうことなんですよね。この状態はよくない、この病院はやめた方がいいかもと私が勝手に判断して、自分でいろいろ調べて、最終的には聖路加国際病院にたどり着きました。

AKEMIさん

「妊娠期乳がん」というワードをインターネットで検索し、様々な情報に目を通しました。乳がん学会のレポートや、海外のメディアもチェックしましたね。その中でアメリカのテキサスに妊娠期乳がんを研究している、大きな病院があることを知りました。渡米するしかないのかなと考えていた矢先、東京の聖路加病院が、その病院と姉妹協定を結んでいることがわかったんです。

医師が患者へ説明する様子

聖路加へセカンドオピニオンとして聞きに行ったら、意見が割れるどころか「全然大丈夫だから、いまから検査しましょう」と言われて。その日のうちにできる検査は全部やって、次のステップはこうしましょう、という提案も病院全体でやってくれました。症例が多いぶん、何をどうするか全部わかってるんですよね。私と同じタイミングでもう一人、通っていた病院で「子どもは諦めましょう」と言われて聖路加にたどり着いた人がいました。地方とか、もしくは都内でも症例の少ない病院だと、諦めましょうと言われて、諦める選択肢しかない人もいるのかなと思いました。

妊娠しながらの手術、抗がん剤、そして出産

がんの治療は手術、抗がん剤、放射線、ホルモン療法のフルコースを行いました。
まず、手術は妊娠4ヶ月のときです。検査の段階ではステージIと言われてましたが、実際に手術してみたらII-Aでした。よく聞かれるけれど、妊娠してましたが全身麻酔を打ちました。終わって麻酔から覚めて、赤ちゃんの心音を確認できたときはやっぱりホッとしましたね。

胎児心拍数図

その後の抗がん剤ですが、こちらもお腹に赤ちゃんがいる状態で、抗がん剤を投与しました。私はステージがII-Aで転移がなかったので、先生から「抗がん剤はやらなくても大丈夫です」と言われてたんです。5年以内の再発率は12%程度でしたが、数パーセントでもいいから下げたいのでやることにしました。

エコー写真

抗がん剤は当時(10年以上前)胎児に影響が少ないと言われていた薬を投与しましたが、そうは言っても抗がん剤なので。がん細胞の成長を抑える副作用によって、胎児の成長への影響もゼロではないと言われていて、生まれてからも何年かは、病院に子どもの成長記録を提出していましたよ。
結果、生まれたとき、順調に成長していたらしく、ものすごく大きかったんです。体重は4kg近く、身長も52cmを超えていて、何いうか安心できる大きさでした(笑)

赤ちゃんの手を握る様子

出産自体は長かったですね。朝7時から陣痛が始まって生まれたのが23時だから…16時間?人によっては治療のスケジュールに合わせることもあるらしいんですけど、私の場合は自然分娩で産めるって言われたので自然に陣痛が来るのを待って出産しました。
がん治療をしながら出産。しかも高齢出産。いろんなリスクがあるなかで無事に生まれて、今では小学六年生です。ふふ(笑)

後編は近日公開予定です。

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