~ がん患者さんの生活に役立つ情報 ~

Massel

~ がん患者さんの生活に役立つ情報 ~

【薬剤師監修】知っておきたい お薬と飲み物の相性

お気に入り

薬剤師さんからお薬を処方されるときに「お水で飲んでください」と言われた経験はありませんか?長期間にわたって服用するホルモン剤や、がん治療中に処方されやすい医薬品との飲み物の相性に注目。現役の薬剤師がわかりやすく解説します。

医薬品は、水で服用したときのデータをもとに開発

医師や薬剤師から、薬は水や白湯で飲むように説明されることが多くあります。その理由は、水や白湯で飲むことで薬の効果を十分に発揮したり、副作用があらわれるのを防ぐためです。

水で服用

医薬品を開発するときは、さまざまな試験や治験を行い、治療効果に関するデータを集めます。その際、多くの医薬品は水で服用した時のデータを元に開発しているため、水以外の飲み物で飲んだ場合は思ったような効果を得られないこともあります。

さまざまな試験や治験

医薬品は水で飲むことを前提として開発されているため、ジュースやお茶などで服用する場合は注意が必要です。医薬品と相性の良くない飲み物で服用することで、効果が減ってしまったり、思わぬ副作用があらわれたりする可能性もあります。

思わぬ副作用

とくにホルモン剤などの長期間にわたって服用するお薬は、同じ飲み合わせを続けてしまうリスクがあります。飲み合わせによっては、思わぬ副作用がでて日常生活に影響がでることも考えられますので、正しい飲み合わせを知っておきましょう。

【ホルモン剤】気をつけたい飲み物

外科手術、放射線療法と並んで薬物療法はがんの重要な治療法の一つ。お薬による副作用を軽減し、負担なくがん治療を継続していくためにも、相性の良くない飲み物を避けましょう。ホルモン剤を服用しているときに気をつけたい飲み物を紹介します。

グレープフルーツジュース

●グレープフルーツジュース
グレープフルーツに含まれる成分「フラノクマリン」は、医薬品を分解する酵素の働きを邪魔してしまう場合があります。ホルモン剤の効果が強くでたり、副作用であるホットフラッシュや肝機能障害、血栓塞栓症(血管に血栓が詰まる病気で、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす)があらわれたりします。ホルモン剤を服用している時には、ジュースだけでなく、グレープフルーツそのものも避けた方が無難です。グレープフルーツの成分は、体内に2〜3日残る場合もあるので注意が必要です。

ハーブティー

●ハーブティー
気分の落ち込みの解消や、リラックス効果が期待できるハーブ「セントジョーンズワート」は、医薬品を分解する酵素の働きを活性化させるので、ホルモン剤の効果が弱まる可能性があります。
また、ノコギリヤシなど女性ホルモンに影響するハーブもあるため、特にタモキシフェンやアナストロゾールなどを服用している場合は、ハーブティーにも注意した方が良いでしょう。

お酒(アルコール類)

●お酒(アルコール類)
ご存じの方も多いと思いますが、お酒は多くの医薬品との飲み合わせに注意が必要です。アルコールは胃から小腸で吸収され、肝臓で分解されて尿へと排泄されます。
お薬を分解する酵素も肝臓に存在するため、お酒と一緒に飲むと分解が遅れてしまいます。体内にホルモン剤の成分が必要以上に残り、重大な副作用である肝機能障害や血栓塞栓症などのリスクを高めます。

豆乳

●豆乳
美容や身体のために、豆乳を飲む習慣がある方も多いのではないでしょうか。大豆に含まれている「イソフラボン」は、女性ホルモンと似た構造をしており、女性ホルモンと同じ働きをすることが知られています。

大豆

乳がんの発症を予防する可能性を示す研究も存在しますが、ホルモン剤を服薬している方は、必要以上に摂るのは避けた方が良いでしょう。乳がんの治療で処方されるホルモン剤は、女性ホルモン(エストロゲン)を抑えるお薬ですが、豆乳の摂取により、女性ホルモンの働きを増加させる可能性も考えられます。

【抗がん剤治療を助ける医薬品】気をつけたい飲み物

抗がん剤治療を受けていると、不眠や便秘などさまざまな体調変化が起きる場合もあります。人によっては睡眠導入剤や下剤など、抗がん剤以外の医薬品を併用することもあるでしょう。抗がん剤治療を支えるお薬と、相性の良くない飲み物を紹介します。

牛乳

●牛乳
医薬品の成分と、牛乳に含まれるカルシウムが反応して、吸収を邪魔することがあります。便秘に使われる酸化マグネシウムは、牛乳と一緒に服用すると反応して効果が弱くなる可能性があります。また、油に溶けるような性質を持っている医薬品は、牛乳の油分に溶けて逆に吸収率が上昇することもあります。油分に溶けることで作用が弱くなる可能性がある抗がん剤も存在するので、お薬は牛乳で飲まない方が無難です。

コーヒー、紅茶、緑茶

●コーヒー、紅茶、緑茶
コーヒーや紅茶、緑茶にはカフェインが含まれており、睡眠導入剤の効果を弱める場合があります。また、カフェイン以外にもタンニンという成分が鉄分の吸収を抑制するため、貧血で鉄剤を服用されている方は気をつけた方が良いでしょう。

お薬の不安や疑問は、医師や薬剤師へ

女性ホルモンは、女性の健康維持に重要な役割を担っていますが、同時に乳がんなどの女性特有のがんの原因であることも知られています。女性ホルモン(エストロゲン)の働きを抑えることでがんが増殖しないようにするホルモン療法は、再発や転移を予防するために重要な治療法です。

がん治療の研究が進み、エビデンスも変わり続けていますが、多くの場合5~10年の長期間にわたって服用することがあります。長く付き合うからこそ、飲み合わせについて不安なことや気になることは医師や薬剤師に相談しましょう。

<こちらの記事もおすすめ>
連載1回 歯医者さんに聞く!がん治療とお口のケア がん治療の前に 編
【医師監修】抗がん剤治療中におきやすい、むくみの原因と対処法

人気記事ランキング

特集