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連載1回 歯医者さんに聞く!がん治療とお口のケア がん治療の前に編
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がんの治療が始まる前に歯医者さんの受診をすすめられることがあります。
「口腔ケア」などと言われることが多いのですが、わかりやすく言うと「お口のケア」のこと。身体の治療をするのになぜ、お口のケアが必要なのでしょう?
この連載ではがんの治療によってお口の中に起こることと、そのケアについて歯科医師の高橋なぎさ先生に教えていただきます。


高橋なぎさ 先生
歯科医師
老年歯科医学会及び摂食嚥下リハビリテーション学会所属
NPO法人摂食介護支援プロジェクト研修修了
介護食士 健康咀嚼指導士 日本糖尿病協会登録歯科医

都内で一般診療を経験した後、現在の訪問診療を行う歯科医院へ。訪問診療がまだ少ない時期でやり方に正解がなく戸惑うことも多い中「お肉が大好きだけど食べられない」という寝たきりのおばあちゃんに出会う。お肉を柔らかくする調理法を伝え、とても喜んでもらえたことをきっかけに、“食べること” “飲み込むこと”の勉強をするため、仕事を続けながら摂食嚥下に関する講習会へ行き福祉調理を学ぶ。
さまざまな状況の中で訪問診療にあたり、事情の異なる患者さんに出会い10年。社会の中で歯科技術を生かしていきたいと日々奮闘中。


がん治療が始まる前に歯医者さんへ。その理由は?

がんの治療が始まる前にお口の中のケアを推奨する理由として、いちばん大きいのは「術後の合併症のリスクを減らすこと」にあると思います。
口内には何億という菌が存在していて、体が健康な時には大丈夫でも、免疫力が落ちている時にはその菌が悪さをしてしまいます。

がん治療が始まる前に歯医者さんへ。その理由は?

抗がん剤や放射線治療を行うと白血球が減少し免疫力が低下したり、身体に何らかの副作用が起こります。そうするとその菌が合併症を引き起こしたり、あるいはお口の中に傷があれば感染症を起こしやすくなってしまいます。だから、がんの治療の前にお口のケアをしておきましょう、ということです。

すでに治療が始まっていて、お口の中に何らかのトラブルがあるという方は主治医の先生に相談してください。投薬中は歯医者さんの治療が受けられない、ということではありません。その人それぞれの状態や処置によります。

こんな症状ありませんか?がん治療前のお口の健康チェックリスト

□ 虫歯
抗がん剤や放射線治療により口の中が乾燥すると、虫歯ができやすいので治療前に治しておいた方がよい。

□ 親知らず
痛みがないならセルフケアでOK。ただし生え方によっては汚れがたまりやすいため、セルフケアの方法を歯科衛生士さんに教えてもらうとよい。

□ 歯周病
免疫力が下がるのでしっかり治療しておいた方がよい。誤嚥で合併症や誤嚥性肺炎を引き起こす恐れも。また、気道挿管時に歯が抜けてしまうこともあるので、今ぐらついている歯はマウスピースなどを相談。

□ いれ歯
適切なケアや調整が行われていないと、菌が繁殖し口内炎の原因に。きちんとした手入れの仕方を歯科衛生士さんに教えてもらうとよい。

お口のケア

お口のケアをしておくことで合併症・感染症の予防ができる、と同時に入院日数を少なくすることにつながります。お口の中の状態がよいことで、食事をスムーズに食べることができ、その結果回復を早めることができるからです。データによると在院日数が10日間くらい違うとか。大きいですよね。

抗がん剤の影響でお口の中に起こること

脱毛したり、吐き気がしたり、抗がん剤治療を始めると体にさまざまな変化が現れます。使用する薬やステージによって状況は違いますが、お口の中にも副作用があります。
訪問診療で診ている患者さんは、一定の治療が終えられている方がほとんどなので、乾燥や口内炎(カンジダ)の症状が多いですね。

これからの連載でそれぞれの症状について詳しく説明していきますが、今回は起こりやすい3つの症状についての紹介です。

抗がん剤の影響でお口の中に起こること 味覚障害が起こる

★味覚障害が起こる
舌にある味を感じるセンサー“味蕾(みらい)”という細胞が影響を受けるために起こります。また、唾液の分泌が少なくなることで口の中が乾燥し、味の変化を感じにくくなります。

抗がん剤の影響でお口の中に起こること  口内炎(粘膜炎)ができやすくなる

★口内炎(粘膜炎)ができやすくなる
傷つける、噛む、など物理的な刺激がなくても免疫力が低下しているため、口内炎(粘膜炎)ができやすくなります。沁みたり、歯や食べ物が当たり食事が摂りづらくなります。

抗がん剤の影響でお口の中に起こること  唾液が少なくなる・乾燥する

★唾液が少なくなる・乾燥する
唾液が少ないと乾燥し菌が増え虫歯や口臭の原因になります。口の中が乾燥することで食べものが飲み込みづらくなったり、舌が口の中に張り付いて会話しづらくなることもあります。

かかりつけの歯医者さんに、相談しよう

がんの治療が決まったら、もしくはすでに治療が始まりお口の中に何らかの症状を感じているのなら担当医の先生に、そしてかかりつけの歯医者さんに相談してください。

気になる症状はがん治療の担当医またはかかりつけの歯医者へ

大きな病院へ行かなくてはいけないの?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。けれど、味覚障害など抗がん剤の副作用で起こる症状に対しては、基本的に対処療法になるので、特殊な治療ができなくてはいけないというものではありません。

かかりつけの歯医者さんに、相談しよう

もしもかかりつけの歯医者さんがいない場合は、がん患者さんへのお口のケアや歯科治療についての知識を習得した歯科医師をHPでも確認できますので、ご自宅に近い歯医者さんを見つけてください。

がん診療連携登録歯科医

いかがでしたか?
今後もがん治療中の口内環境を改善し、美味しくご飯が食べられるような情報を発信していきます。

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