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【医師監修】抗がん剤治療中におきやすい、むくみの原因と対処法

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「いつも履いているズボンがきつい」「指輪や腕時計が通らない」など、抗がん剤を始めてから手足や顔がむくんでつらい、と感じている方もいるのではないでしょうか。むくみはその原因と対処法を知ることで、悪化させないことができます。今回はむくみの原因と対処法とともに、軽減が期待できるセルフケアについて詳しく解説します。

治療中に起きるむくみの原因は、大きく3つ

むくみは「浮腫(ふしゅ)」とよばれ、身体の水分などが皮膚の下の皮下組織に余分に溜まることで起きます。むくみが起きる原因は大きく分けて3つあります。ここでは、それぞれの原因と対処方法について見ていきたいと思います。

●薬剤による、全身性のむくみ
抗がん剤治療の中でも、「タキサン系」の抗がん剤を使用するとむくみが起きやすいとされています。タキサン系の抗がん剤でもドセタキセルは「微小管阻害薬」に分類されており、比較的使用頻度の高いものです。これが細胞の中の微小管の働きを抑える際に、毛細血管の壁にすき間ができることで、結果としてむくみを生み出してしまうことになります。

薬剤

薬剤によるむくみへの対処は、ステロイド薬や利尿薬の投与が効果的とされています。むくみの兆候に気がついたときには、早めに病院で相談するようにしましょう。ただし、ステロイドは使い過ぎるとかえってお顔が丸くなる、いわゆるムーンフェイスが出ることがありますので、気をつけて観察しておきましょう。

●低栄養による、全身性のむくみ
肝臓などで作られるタンパク質に「アルブミン」とよばれるものがあります。これは血管中の水分を保つ役割を持っていますが、栄養をしっかりと摂取していないとアルブミンが減少してしまいます。そうすると、保てなくなった水分が血管の外へ漏れてしまい、むくみにつながるのです。

高たんぱくな食材

低栄養によるむくみには、規則正しい食事を心がけることが重要となります。また、食事の際には塩分は控えめにし肉や魚、大豆といった高タンパク質な食材を意識して摂り入れるようにしてください。

●手術や放射線治療による、手足のむくみ
がん治療でリンパ節を切除したり、放射線治療を受けたりすることが起因となるむくみが「リンパ浮腫」です。網の目のように全身に張り巡らされたリンパ管では、老廃物や不要タンパク質を運ぶ役割をするリンパ液が流れています。手術などでこれが遮断されると、行き場のないリンパ液が溜まり、むくみが生じてしまいます。このむくみがリンパ浮腫で、乳がんの手術後は脇の下や肘の周囲、婦人科・必尿器科がんでは下腹部、陰部、脚の付け根などに出現しやすいとされています。

リンパトレナージ

リンパ浮腫の対処には、医学的な側面から「用手的リンパドレナージ、圧迫療法、運動療法」を取り入れてアプローチしていくことが効果的とされています。リンパドレナージとは、足または手の先端など身体の末端部分から中心部の心臓に向けて行うマッサージです。それに加えて医療用の弾性ストッキングなどを用いた「圧迫療法」や、リンパ系を活発に動かすための関節の運動。またストレッチなどの「運動療法」で筋力強化をし、むくみの原因となっている箇所のリンパの動きを活性化します。

むくみを悪化させないために、心がけたいセルフケア

むくみを少しでも緩和させるために、普段の生活で心がけておきたいポイントをいくつかご紹介します。今日からでもトライできることが多いので、まずは生活習慣から見直してみましょう!

花の写真

□皮膚の保護・スキンケアをしっかり行い、肌を清潔に保湿しておく

□虫刺され・日焼けを防止するために、外に出る際には虫除けスプレーや日焼け止めを塗る

□身体を締めつけ過ぎない、ゆったりとした服を着るようにする

□正座やあぐらなど、長時間同じ姿勢で過ごさないように意識する

□重いものをむくみのある腕にかけることは避け、身体に負荷がかからないようにする

□体重を増やさないよう、食生活、生活習慣に気をつける

□足や手などのむくみは、クッションなどを使って位置を高くして寝る

むくみにはさまざまな原因があり、起こるタイミングや頻度、むくみの程度も人それぞれです。そのなかでも日常生活で少し工夫をしたり、セルフケアを取り入れたりすることで悪化を防ぐことができます。ぜひご自身に合わせたむくみケアを試しながら、快適に過ごせる方法を見つけてください。

監修医師 恵仁会 いまむらウィミンズクリニック 乳腺外科 渡海 由貴子 先生
長崎大学医学部卒。医学博士。日本外科学会専門医、日本乳癌学会専門医。日本乳がん検診精度管理中央機構マンモグラフィ読影講師。撮影技術認定、超音波認定医師。
婦人科、形成外科の知識と経験をあわせもつ乳腺外科医。乳癌のオンコプラスティックサージェリー、陥没乳頭、肥大乳頭、授乳期トラブルなどの良性疾患の診療を得意とする。

 

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