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【歯科医監修】6/4は虫歯予防の日!がん治療前に歯医者さんへ行くと、回復が早い理由(後編)

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6月4日は「虫歯予防の日」。前編ではがん治療前に歯医者さんへ行く理由について、そして歯科検診ではどのようなことをするか、をお届けしました。後編ではがん治療中、虫歯やトラブルが起きた場合について、抗がん剤治療によってお口のなかに起こることについて、お伝えします!教えてくださったのは、前編と同じく歯科医師の高橋なぎさ先生です。

くすのき歯科医院 院長 髙橋なぎさ

抗がん剤治療中に、歯科治療はできる?

「がん治療前に歯医者さんへ」とお伝えしていますが、正直なところ入院や手術の日程が決まってから来られる方も多いです。普段かかりつけの歯医者さんがあって、定期的なクリーニングや点検をしている方なら問題ないかもしれません。しかし歯医者さんに久しぶりに来られる方は、入院や手術の直前に異常が見つかるかもしれませんよね。歯科治療は1回で終わらないものがほとんどなので、できることが限られてしまう場合があります。

カレンダーと時計

虫歯が複数見つかっても、一気に治療できる本数は限られていますし、患者さんも長時間お口を開けているのはツライので、限界があります。なので、余裕をもって早め早めに来てもらって、治療をしっかりしたうえでがん治療に臨んでいただきたいんです。

医師が患者さんに何かを説明している様子

抗がん剤治療が始まっている場合も大概の治療はできますが、たとえば化膿していたり抜歯が必要になった場合は、患者さんに対してどこまでの処置をしていいのか、担当しているがん治療医に確認してから歯科治療をすることになります。「患者さんのお身体の状態どうですか?」「こういう処置や薬を処方してもいいですか?」というのを聞いて、OKがでればできます。

空

切開などの処置をする場合は、抗がん剤治療中は免疫力が下がっている状態なので、感染症のリスクが上がります。感染症などが起こるとがん治療自体のスケジュールが遅れる場合もありますので、やはりがん治療が始まる前に歯科治療を終えておくのが安心です。

がん治療と虫歯の関係

抗がん剤治療の副作用(痛みや吐き気など)で歯ブラシをする間隔があいたり、唾液が少なくなることで、歯周病と虫歯リスクが高まると言われています。日頃の食生活や歯ブラシの習慣など、個人差が大きいのですが、治療中はいつもより虫歯ができやすい状態だと思ってください。

2本の歯ブラシ

がん治療時に虫歯のリスクが上がる理由として、結局は唾液が少なくなることが大きく関係しています。虫歯を予防するために菌を減らすことはもちろんですが、唾液も大切な要素のひとつ。唾液は食べ物の消化を助けてくれたり、お口のなかの保湿や、虫歯菌を押し流すはたらきがありますが、虫歯予防の観点で重要なのが「緩衝能(かんしょうのう)」という能力です。

唾液検査をする機械

緩衝能とは、虫歯菌が住みやすい酸性に傾いた唾液を中和し、中性に近づけてくれる能力です。酸性が強い人は虫歯になりやすかったり、お口のなかが乾きやすくなります。乾くということは、味覚の変化や粘膜炎(口内炎)などの副作用を感じやすい、ということです。
歯医者さんでは歯の健康だけでなく唾液の緩衝能がはたらいているかチェックする検査(SMT)もできる場合があります。

歯周病にも要注意!

「歯周病」という言葉を耳にしたことがある方も多いと思います。歯周病のはじまりは歯肉炎で、歯肉(歯ぐき)が炎症を起こして腫れている状態です。炎症を起こしたままにしておくと、菌が繁殖して骨が溶けてなくなる歯周病につながります。

両手で顔を覆う女性

「お口のなかには数億の菌がいる」とお話しましたが、その菌たちは血液をごはんにして生きています。歯みがきをしているときに、強い力で磨いていなくても歯ぐきから血が出てしまう…なんてこと、ありませんか?あの血が菌のごはんです。

歯医者さんへいくと「血が出てもしっかり磨いてくださいね」と言われるのは、歯ぐきに血が溜まらない環境にしておかないと、菌がごはんを食べて元気になっちゃうから。歯ぐきが腫れている、ちょっとした刺激で血が出ちゃうところに菌は住んでいます。

治療機器

歯医者さんの定期的なクリーニングは、そういう部分の炎症を抑えて歯周病菌が住みにくい環境をつくることを目的にしています。お口のなかの菌はゼロにはできないので、ごはんがない環境をつくって菌を活動させない、というのがベストです。

早期回復のためにも、歯医者さんにはお早めに

歯医者さんは何か異常があってから行く場所ではなく、異常がないことを確認しに行く場所だと思って欲しいです。私としては「日常の困ったことを話にくるところ」でもいいと思っています。困りごと相談所みたいな(笑)そういう歯医者さんの使い方があってもいいんじゃないでしょうか。

患者さんと笑顔で話す歯科医

がん治療のどの段階で「歯医者さんへ行ってくださいね」と言われるかは、病院や医師によると思いますが、告知されたとき治療のスケジュールが決まっていなくても、念のため歯医者さんへ行っておこう、と思ってもらえるよう呼びかけていきたいです。
患者さんご本人は、がんを宣告されてショックが大きいですし、それどころじゃないだろうから。これは患者さんじゃなくて社会側が代わって啓蒙していくべき問題だと思っています。

くすのき歯科医院 院長 髙橋なぎさ

お口のなかに異常があって食べられないと、体力や免疫は上がらないですよね。食事ができるかどうかで、身体の治癒能力や回復の早さも変わってきます。がんを早く治すためにも、早めに歯医者さんへ行ってください!

6月4日「虫歯予防の日」にちなんだ今回の特集、いかがでしたか?健やかな口腔環境は、健やかな身体、そしてがん治療の大きなカギとなることを高橋先生に教えていただきました。
Masselの過去の連載では「がん治療とお口のケア」について、より詳しくご紹介しています。ぜひ、こちらもチェックしてみてくださいね。

連載第1回 歯医者さんに聞く!がん治療とお口のケア 〜がん治療の前に編〜
連載第2回歯医者さんに聞く!がん治療とお口のケア 〜抗がん剤副作用の対処編〜
連載第3回歯医者さんに聞く!がん治療とお口のケア 〜味覚の変化編〜
連載第4回歯医者さんに聞く!がん治療とお口のケア 〜食欲がないときの栄養の摂り方と、家族の関わり編〜

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