抗がん剤治療中に仕事復帰する際のポイント|時期の目安や復職の流れ

抗がん剤治療中に仕事復帰する際のポイント|時期の目安や復職の流れ

抗がん剤治療を開始すると、副作用によって髪の毛が抜けたり、体力が低下したりします。そのため、今後の通勤に不安を感じている方や、どれくらいで仕事に復帰できるのか心配している方は少なくありません。治療中は休職して、治療終了後に体調が回復してから働き始めるのも一つの選択肢です。ただ、なかには抗がん剤の治療中に仕事へ復帰する方もいます。

そこで今回は、抗がん剤治療中に仕事復帰する際のポイントについて解説します。治療開始から仕事復帰までの期間の目安や、実際に仕事復帰した方の声などもご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

抗がん剤治療が始まってから仕事復帰できるまでの目安は?

がんになってから仕事復帰できる時期の目安は?

抗がん剤治療中に仕事復帰するタイミングは、副作用が安定したのち、1カ月程度の準備期間を経た頃が目安です。

一般的に抗がん剤治療の副作用が落ち着くのは、抗がん剤投与後2週間以降であることが多いです。ただし、あくまでも個人差があることに注意しましょう。また、投与後2週間が過ぎて副作用が比較的落ち着いたとしても、脱毛・手足のしびれ・乾燥といった症状が生じることがあります。

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仕事復帰をするためには体力をつけるために、1カ月程度のリハビリが必要となります。抗がん剤治療を受けると、多くの人に体力の低下が見られるためです。これまでよりも活動量が減ったり、精神的な疲労感をおぼえたりする方もいるでしょう。そのため、リハビリでは以下のようなトレーニングを行うことをおすすめします。

【リハビリのイメージ】
・出社をする想定で起床・就寝する
・出勤を想定して、30分~1時間散歩をする
・買い物に出かける、図書館で一定時間過ごすなど

副作用が安定しても、いきなり治療前と同じように働けるようになるとは限りません。心身の調子に配慮して、無理をしないことが仕事復帰のコツです。

【出典】厚生労働省「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」(令和5年3月改定版)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001179451.pdf

抗がん剤治療中に仕事復帰するまでのプロセス

ここでは、抗がん剤治療中から仕事復帰するまでの流れをご紹介します。復職までの見通しを立てるために、以下のようなスケジュールをイメージしてみましょう。

①職場への復帰希望を主治医に伝える
まずは職場の上司や産業医、産業保健師に「勤務情報提供書」を作成してもらいましょう。それを主治医に提出し、職務内容を理解してもらったうえで主治医に復帰の時期について相談します。復職が可能と判断された場合は、主治医からの就業継続・職場復帰に関する意見書や診断書を復職申請書に添えて会社へ提出するケースが多いです。

②職場と復帰までのプランを相談する
主治医からの職場復帰に関する意見書や診断書をもとに職場の上司や産業医と面談を行い、復職のプランを作成します。上司と治療スケジュールを共有し、仕事と治療を両立する体制を整えましょう。その際は、以下のポイントを話し合うことが大切です。

【上司や産業医に理解してもらうこと】
・今後の治療や通院などのスケジュール、見通し
・現在の症状
・通勤や仕事に影響する副作用症状
・可能な勤務内容

【確認事項】
・勤務形態
・勤務時間
・勤務内容
・復職後のサポート体制
・利用できる制度 など

③段階的に職場へ復帰する
最初のうちは無理のない範囲で仕事をスタートして、徐々に体を慣らしていきます。短時間勤務する、時差出勤する、内勤のみで働く、在宅勤務(テレワーク)をするといった選択肢を相談しましょう。復職後も体調や治療のペースに合わせて勤務状況を調整しましょう。

働き方の例

参考サイトURL:
https://www.pref.ishikawa.lg.jp/kenkou/gan/documents/syuurousien.pdf

抗がん剤治療中に仕事復帰する際のポイント

抗がん剤治療中に仕事復帰する際のポイント

抗がん剤治療中に仕事復帰するとき、「周囲に迷惑をかけるのでは?」と心配になったり、外見の変化が気になったりする方もいるでしょう。ここでは、仕事復帰のポイントを解説します。

●職場の理解を得る
会社の人に病気の状態について伝えるべきかは、あくまでも本人が判断することです。ただし、ご自身の状況を知らせてコミュニケーションを取ると、周囲からの配慮やサポートを受けやすくなります。
たとえば、場合によっては抗がん剤の副作用で業務に支障が出てしまうかもしれません。そんなとき、自分の状況を理解してくれる上司や同僚が身近にいると心強いですよね。また、会社側の配慮により体力消費の少ないデスクワークの部署に人事異動したり、短時間勤務や出社時間の調整に応じてもらったり、柔軟な働き方ができる可能性があります。産業医がいる場合は、就労の悩みや体調についてすぐに相談できるので、仕事復帰の不安を軽減できるでしょう。1人で頑張ると負担が大きいと感じたら、会社に相談するという手もあります。

●外見ケアをする
抗がん剤治療によって毛髪・まつ毛・眉毛などの体毛が抜けることがあります。また、脱毛以外に爪が変色するといった変化も起こり得ます。外見が気になるときは、アピアランスケア(=外見変化に関するケア)のためにアイテムを活用するのがおすすめです。

顔周りの変化が気になるときは、医療用ウィッグで髪の毛のボリューム感をカバーしたり、アイブロウやつけまつげなどのカバーメイクアップで工夫したりする方法があります。あらかじめ治療前の顔写真を撮影しておくと、ウィッグを選んだりメイクをしたりする際の参考にできるでしょう。

抗がん剤治療中に仕事復帰をした方の声

実際に抗がん剤治療中に仕事復帰した方は、当時どのような経験をされたのでしょうか。ここでは、実際に抗がん剤治療と仕事を両立した方の事例をご紹介します。

●治療中も仕事を続け、自信を取り戻した

46歳女性で乳がんと診断されたKUMIKOさん

1人目にご紹介する方は、46歳女性で乳がんと診断されたKUMIKOさんです。彼女は治療を続けながらフリーのスポーツトレーナーとして活躍し、2019年に本人の念願であったご自身のスタジオをオープンされました。

KUMIKOさんは治療を受けている当時、抗がん剤治療の副作用によって体を動かすことができなくなってしまったといいます。ベッドで寝ている期間が長いときは、「もう仕事も趣味もできないのかもしれない」と全てのことをマイナスに捉えてしまいました。そんなある日、かつてトレーナーとして教えていたヨガの呼吸に寝ながら取り組んでみたら、気持ちが軽くなるのに気づいたそうです。この経験が、物事の見方や考え方を変えれば自分にもできることがあると気づくきっかけとなり、復職の原動力となりました。

治療中に担当したレッスンでは、普段の2割程度の力しか出せずにいたそうですが、それでもレッスンに行くと元気が出て、自信を取り戻せたといいます。生徒さんを相手に教える職業なので、外見のケアには特に気を使ったそうです。医療用ウィッグやカバーメイクで工夫して、「これなら人前に立てる!」と自分自身で納得できる外見になれたことが、仕事を続けられた理由だとお話しされていました。

KUMIKOさんのライフスタイル密着取材はこちら

●会社のメンバー全員に話し、協力を得た

65歳女性でリンパ腫と診断されたSANAEさん

2人目にご紹介する方は、65歳女性でリンパ腫と診断されたSANAEさんです。彼女は食品の品質管理組合で働きながら治療を続け、趣味のバンド活動やバードウォッチングなどを楽しんでいます。

SANAEさんはまだ体調不良の原因がわからなかった時期、胃の痛みで食事を十分に摂れなくなり、5kg近く痩せてしまったそうです。しかし、リンパ腫の治療が始まると、食欲も出てしだいに回復していきました。治療を続けながら、感染症のリスクに注意しつつマスクで会社に出勤し、体調の良いときは趣味のバンドの練習にも参加したといいます。

そんなSANAEさんは、職場の人たちに協力してもらうために、メンバー全員にご自身の病状や副作用のことを話してから復職しました。結果として、周囲の人とコミュニケーションを取ることで理解を得られて良かったと感じているそうです。アクティブに人生を楽しむ彼女は、これからも「新しいことも始めたい」「新しい友達も作りたい」とお話しされていました。

SANAEさんのライフスタイル密着取材はこちら

抗がん剤治療中に職場復帰をする方へレディススヴェンソンが行う支援活動

医療用ウィッグの専門店レディススヴェンソンでは、抗がん剤治療中に職場復帰をする方への支援活動に取り組んでいます。ここでは、レディススヴェンソンが実施する支援活動の一例をご紹介します。

●医療用ウィッグや外見をケアするアイテムの提供
レディススヴェンソンが運営する副作用ケアの総合通販サイト「プレスタ」では、医療用ウィッグや治療中の生活に必要な商品を幅広く取り扱っています。

医療用ウィッグは、抗がん剤の副作用や脱毛症のときにヘアスタイルをカバーして気持ちを前向きにするアイテムです。また、抗がん剤の副作用では頭髪以外にもさまざまな症状が現れます。たとえば、眉毛やまつ毛が抜け落ちたり、爪が変色したり、肌が敏感になったりするケースも少なくありません。そのため、「プレスタ」では眉毛やまつ毛の脱毛をカバーするメイクアップアイテムや、爪や皮膚に現れる副作用をカバーするケアアイテムなども取り扱っています。

副作用ケアの総合通販サイト「プレスタ 」

治療が決まったら副作用ケアの総合通販 PreSta by Lady's SVENSON

●「がん哲学外来 スヴェンソンメディカルカフェ」の開催
レディススヴェンソンは一般社団法人がん哲学外来との共催で、「がん哲学外来 スヴェンソンメディカルカフェ」を実施しています。メディカルカフェには、レディススヴェンソンのお客様のほか、地域の患者様やそのご家族、医療従事者が集まります。会場では各種専門家や同じ立場の方たちと対話することが可能です。医療従事者による講話の時間や、交流会の時間をご用意し、参加者がお互いに話せる場を提供しています。

レディススヴェンソンが主催するイベント情報一覧

自分のペースで抗がん剤治療中の仕事復帰を目指しましょう

ここまで、抗がん剤治療中の仕事復帰についてお伝えしました。抗がん剤による副作用が安定してきて、一定の準備期間を経たら、仕事を再開できる可能性があります。ご自身の心身の調子に合わせて、無理のないペースで仕事を続けましょう。仕事復帰に向けてアピアランスケアを始めるなら、お客様の希望のヘアスタイルをお作りできるレディススヴェンソンのセミオーダーウィッグがおすすめです。またウィッグを購入されてからのアフターケアも充実しています。医療用ウィッグの他にも、爪の変色や肌の保護ができる商品もあるため、お気軽にご来店予約をお申し込みください。自分に似合う髪型を見つけて、これまでのようにおしゃれを楽しめます。

ご来店やオンラインカウンセリングは、以下のページからお申し込みいただけます。医療用ウィッグについて詳しく知りたい方は、お気軽にご相談ください。

来店予約やオンラインカウンセリング予約希望の方はこちら

抗がん剤治療中の仕事復帰を考える際によくある疑問

Q.職場の同僚に、がんの治療中であることを伝えるべきですか?
ほかの従業員に病名を公表するかどうかは、あくまでも本人の判断に任されています。ただし、長い目で見ると周囲の人たちから状況を理解してもらうことで、仕事と治療の両立がしやすくなるかも知れません。たとえば、通院のために休みを取ったり、体調が悪いときに会社側へ配慮をお願いしたりと、協力を得やすくなります。

Q.抗がん剤の副作用で仕事に支障が出ることはありますか?
抗がん剤の副作用には個人差があるものの、仕事に支障が出る可能性も考えられます。もしも副作用が強く、働くうえで負担を感じるときは、仕事に支障をきたす症状や自分でもできる事などを上司や産業医に具体的に相談しておくと良いでしょう。心身に無理がないように、業務内容や勤務時間を調整することが大切です。

Q.体調に波がある場合はどうすれば良いですか?
抗がん剤治療中は、体調に波が出ることがあります。そのため、仕事では無理をせずに体調に合わせて休みを取ることが重要だといえます。体調に波がある場合は、事前に上司や同僚に相談しておくと理解を得やすいでしょう。

Q.職場に産業医や産業看護職が勤務していない場合、外部に相談できる窓口はありますか?
厚生労働省は、小規模の事業場で働く労働者向けに都道府県の産業保健総合支援センターや地域窓口(地域産業保健センター)を設置しています。事業場内に産業保健スタッフがいない場合は、これらの施設で医師や保健師に個別で相談に応じてもらうことが可能です。通院中の病院でがん相談支援センターがあれば、がん相談支援センターの相談員から外部の相談窓口へつないでもらうこともできます。

Q.抗がん剤治療の副作用でまつ毛や眉毛がないので出勤するのが恥ずかしいです
副作用で抜けたまつ毛や眉毛をカバーするメイク方法があります。アイブロウやつけまつげなどのカバーメイクアップアイテムを活用してみてはいかがでしょうか。このように抗がん剤治療にともなう見た目の変化をケアすることを「アピアランスケア」と呼びます。通院している医療機関でアピアランスケアについて相談しても良いでしょう。
アピアランスケアとは?重視される背景と具体的な内容

Q.医療用ウィッグは仕事中に蒸れたりずれたりしませんか?
医療用ウィッグは自分の頭に合ったサイズを選び、適切な方法で着用するとずれにくくなります。また、素材や構造に工夫された蒸れにくい医療用ウィッグも販売されています。もしも仕事中に汗をかいて気になる場合は、休憩時間にプライバシーが保てる場所でウィッグを外して、こまめに汗を拭き取りましょう。
医療用ウィッグを取れないようにする方法とは?正しい着け方やズレる理由を解説

Q.職場につけていく医療用ウィッグを購入するための助成金制度はありますか?
医療用ウィッグは健康保険や医療費控除の対象外となります。ただし、購入費用の助成事業に取り組んでいる自治体が多くあるので、お住まいの都道府県の情報をチェックしてみましょう。自治体が提供する助成事業は、地域ごとに助成金額や対象となる品物、条件などが異なります。
医療用ウィッグの助成金制度を導入している都道府県市区町村一覧

室田 かおる がん看護専門看護師
この記事の監修

室田 かおる がん看護専門看護師

日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院
がん診療推進センター
がん看護専門看護師/がん性疼痛看護認定看護師
医療リンパドレナージセラピスト、がん相談支援センター相談員
治療と仕事の両立支援コーディネーター