~ がん患者さんの生活に役立つ情報 ~

Massel

~ がん患者さんの生活に役立つ情報 ~

リンパ浮腫用ストッキング「MAEÉ」で、気持ちも行動も“前へ”

お気に入り

がん治療後、リンパ浮腫を発症した水田さん。その経験からリンパ浮腫用ストッキングの会社を立ち上げました。とはいえ、ストッキングの開発経験はゼロ。そして時代はコロナ禍へ…。そんななかどのように“前へ”進んでいったのか。開発までの道のりと、ご自身のブランド「MAEÉ」の魅力をお届けします!

水田さんのがん治療体験記はこちらでご紹介しています!
がん治療はどうだった?体験者のリアルボイス 水田さん(前編)
がん治療はどうだった?体験者のリアルボイス 水田さん(後編)

衝撃的だったリンパ浮腫用ストッキング

リンパ浮腫という後遺症とどう付き合っていけばいいのか私自身も悩むなかで、ストッキングをつくろうと思ったのは、がんを経験してから7年以上経ったときでした。
初めてリンパ浮腫用ストッキングを見た時、かなり衝撃を受けたんです。ストッキングというよりギブス? サポーター? みたいな分厚さで、色も黄土色。すごく硬くて、履くにも20〜30分かかる。見た目も肌と全然ちがうので、事情を知らない人が見ると、ひと目で「何か装着してる」と分かる厚みと素材なんです。

ストッキング

それを毎日履かなければいけないとなったとき「いいじゃん。これが新しい私なんだから」とは到底思えなくて…。やっぱり服で隠したい、目立たないようにしたい、そんな気持ちでした。職業柄、おしゃれな人が多い職場でしたし、誰も人のストッキングなんてじっくり見ていないにせよ、勝手に引け目を感じていましたね。

そんなとき、社内の新規事業のコンペがあったんです。自分が体験したことや、病気が理由でおしゃれを楽しめなくなってしまう人がいることを知っていたので、美容に関わる仕事をしているプロとして何かできないかと思い、応募しました。

スタート直後にコロナ禍へ。そして見えてきたもの

会社から新規事業として認められ、よし、やるぞ!となったはいいものの…当然ながらストッキングづくりのノウハウも経験もなかったので、はて、何から手をつければいいのだろう?となりました(笑)さらに、時はコロナ禍に突入する2020年の初頭。協力していただけるメーカーさんを探したくても、なかなか会いに行くことができない状況でした。
まずはリンパ浮腫用のストッキングについて調査を開始。海外からの輸入品がほとんどのなか、日本でつくっていそうなところを探して、必死にアプローチして、幸運なことにとても素晴らしいものづくりをしているメーカーさんが受けてくださいました。

打ち合わせの様子

メーカーさんが決まったら、今度は具体的な商品企画です。
がんを体験して7年以上経過していたので、同じ病気の友達がたくさんいました。「ここがこうだったらいいよね」とか「なんでこういうものがないんだろう?」という仲間内で聞いてきた悩みを改めて検証してみたり、モニターの患者さんを募ってリンパ浮腫とどんな風に付き合っているかヒアリングを重ねました。

水田さん

メーカーの技術者の方たちも「そういうところが患者さんの悩みだったんだ」って気づきもあったみたいです。
たとえば、ストッキングってお腹の真ん中にシーム(縫い目)があるんです。手術後、お腹に傷がある方たちから「当たって気になる」という声をたくさん聞いていました。タオルを挟んだり、深履きのショーツを履いたり、縫い目をずらしたり…くふうしながら履いていたんです。

そこでメーカーさんにお腹のシームをなくすのは構造的に可能か相談したら「できますよ」って拍子抜けするくらいすんなり言われて(笑)もっと声を上げていかないと届かないんだなって、そのときすごく感じました。

気持ちや行動が一歩「前へ」進む商品を

私たちのブランド名は「使うことで、気持ちや行動が前へ一歩進む」ことを目指して「MAEÉ(まえ へ)としました。このストッキングがあることでお出かけしたくなる、華やかなシーンも笑顔で参加できる、そんな商品でありたいと思って向き合っています。

もしかすると、普通のストッキングしか見たことない方は「え?これの何がすごいの?」と思うかもしれませんが(笑)一般的なリンパ浮腫用ストッキングより、かなり薄手なんです!
「治療として必要な着圧のパワーと見た目の自然さを両立する」が一番の目的なので、高い圧迫力(最大43hPa)と足首〜太ももにかけての段階着圧設計で医療機器としても届出済。今では多くの医療機関で採用していただいています。

リンパ浮腫の経験から開発した「コンプレッションストッキング」についてはこちら
また、デスクワークで長時間座っている方から「時間がたつと食い込む」というお悩みを聞いていました。なのでゴムのように強く伸縮する糸ではなく、ソフトに伸縮するものを選び、立ったり座ったり姿勢を頻繁に変える方でも快適に履けるようくふうしています。

リンパ浮腫用のストッキングをどうやって選べばいいか迷っている方は、プロに相談してください。リンパ浮腫用のストッキングはファッションアイテムではなく、治療のために使うものです。メーカーによって圧のかかり具合、圧のかかる場所、サイズ設定も微妙に異なるので、自分ではなかなか判断が難しいんですよね。
がん治療医、看護師さん、そして最近はリンパ浮腫療法士さんという専門の資格を持った方もいます。最初はそういう方に相談して、アドバイスをもらうことをおすすめします。

むくみに悩む女性にも、シェアしたい

商品開発の際、たくさんの患者さんからお話を聞かせていただきましたが、リンパ浮腫と向き合ってる方は「むくみのエキスパート」だと思ったんです。
むくみを軽減するための生活やケア、それはがん治療をしている女性だけではなく、むくみに悩む女性にもシェアしたい知恵だと感じました。そこから着想を得てコンプレッションソックスが生まれました。リンパ浮腫の方はもちろん、立ち仕事やデスクワークでむくみに悩む女性も使えるアイテムです。

むくみに悩む女性へ。「コンプレッションソックス」についてはこちら
見た目は普通のファッションソックスですが、医療機器のクオリティでむくみをケアしてくれます。カラーバリエーションも豊富なので、ファッションにあわせて選んでほしいですね。最近では全国区でお店を展開されているアパレルブランドでも取り扱いが決まりました。

水田さん

私たちはブランドのコンセプトに「ウェルネスワードローブ」を掲げています。毎日身につけるものが身体をケアしてくれるもので、かつイヤイヤじゃなく、ウキウキ選びたくなるものであってほしい。
「こんなストッキングは履きたくない」って思った自分だからこそ、毎日身につけるもので、もっと自分を良くする。そういう考えを広げていきたいです。

<こちらの記事もおすすめ>
がん治療はどうだった?体験者のリアルボイス AKEMIさん(前編)
がん治療はどうだった?体験者のリアルボイス MIHOさん

人気記事ランキング

特集