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がん治療はどうだった?体験者のリアルボイス 水田さん(後編)

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AYA (アヤ)世代※でがんを経験された水田さん。軽い不正出血が続きクリニックでは異常なしと診断されたものの、大きな病院で子宮頸がんが判明。前編ではその経緯や入院中のことについてお聞きしました。後編ではがん経験後に感じた心の変化、そしてリンパ浮腫用ストッキングブランド『MAEÉ』を立ち上げるまでのことについてお届けします。
※一般的に15歳〜30歳代までの年齢層、がん医療において用いられます。

前編はコチラ

プロフィール
水田さん(41歳) 東京都
〔家族構成〕両親、兄
〔がんの部位〕子宮頸がん
〔取材時の状況〕手術→抗がん剤→経過観察中

すべてのパンフレットを見て、スヴェンソンを選んだ理由

私自身が美容の仕事をしていることもあり「見た目」や「装うこと」が心に与える影響が大きいことは、強く感じていました。だから、ウィッグは絶対妥協したくなかったんです。
まず病院に置いてあるすべてのパンフレットを取って、すみずみまで読み込みました。もちろんネット通販も検討したんですけど、逆に情報が多くて判断ができなかったんです。実際に商品が見られるお店がいいなと思って、駅近で店内の雰囲気も良さそうな、スヴェンソンの銀座サロンへ行きました。

ウィッグ

私の場合は告知を受けてから2週間後には入院・手術をして、抗がん剤を投与するスケジュールだったので、イッキに試せて相談にもすぐ乗ってもらえるところじゃないと不安だったんです。
ウィッグってご年配の方が着けるイメージがあったので、自分に合うものがあるかな?って半信半疑でした。でも、スヴェンソンで対応してくださったスタッフさんが「若い方もいらっしゃいますよ」って教えてくれたり「いまの髪型に似たものもできます」って、丁寧に対応してくれたので安心できました。

風船

お世辞ではなく、スヴェンソンのサロンへ行くのはとっても楽しみでしたね。病院と家の往復が中心の毎日で、ウィッグの洗い方を教えてもらったり、メンテナンスしに行く日は「今日は銀座のサロンに行くの♡」ってウキウキしちゃってました(笑)
個室でおしゃべりもしやすいのも良かったです。スタッフさんの対応も、若いのにかわいそうって感じがまったくなくて「調子はどうですか?美味しく食べられてますか?」みたいな、気遣いはあるけど普通の会話が嬉しくて、本当にいい気分転換でした。

スヴェンソン 個室

実は、治療期間中に友人二人の結婚式がありました。
治療中だけど絶対に参列するって心に決めていて、主治医の先生にも参列するタイミングは元気でいられるようにしたいと伝えて体調を調整しました。

ヘアセットも素敵にして行きたいので、スヴェンソンのスタイリストさんに相談したら「ウィッグでも可愛くセットもできますよ」って言ってくださって。ヘアスタイルのイメージ写真を見せながら、美容室みたいに相談できて、すっごく素敵にしていただきました。大切な友人の結婚式がいい思い出になり、動画や写真を今でもよく見返しますが、参列者のなかで私がいちばん素敵なんじゃない?って毎回思えます(笑)

がん体験後の、こころの変化

これまでの29年間は仕事に遊びに、ひたすら楽しく過ごしてきました。
いずれはどこかのタイミングで結婚して家庭を持って…と思っていたのが、がんの罹患によって一気に覆りましたね。

いちばんメンタルにずしっときたのは治療後です。
ひと通りの治療が終わって、幸い職場にも復帰できたんですけど、命に関わるような体験をしたあとで、それまで生きてきた人生観みたいなものと、がんを体験した心の折り合いがつかないと言うか。心ここにあらずみたいな状態が何年も続きました。
ああ、ずっとこうやって再発の不安を抱えながら、ネガティブな感じで生きていくのかな…って。

水田さん

でも数年経つうちに、この体験を生かしたいって思えるようになったんです。もしこれから長く生きられるのなら、何か自分が体験したことを生かしていきたい。でも、そう思えるようになるまでには正直時間が必要でした。
治療直後は再発への不安が大きくて、友達と話していても、仕事していても「私は来年、ここにいないかもしれない」って思ってました。そうするとなんだかすべてのことが虚しくて。助かって良かったって思わなきゃいけないのに、いろんなことを遠く感じていましたね。でも1年、2年と時間が過ぎ、定期検診をクリアしていくと「もしかして楽しく元気に生きている未来もあるのかもしれない」って、ちょっとずつ自信がついてきたんです。

時計

術後に定期検診に行き始めて3年ぐらい経ったときかな、主治医の先生が初めて笑顔を見せてくれたんです。その先生は女性版ブラックジャックみたいな、いつもキリッとして淡々とした感じがかっこいい先生なんですよ(笑)その先生が「水田さんは診察室に入ってくる時に、いつも泣きそうな感じだったから、ようやくこうやって言ってあげられることができて私も本当に嬉しい。もう安心できますね」ってニコッとしながら。
その顔を見て、込み上げてくるものがありました。

リンパ浮腫の悩みから、ストッキングの開発へ

リンパ浮腫が起きたのはがん治療が終わるか終わらないかくらいなので、術後半年〜1年くらいのときでしょうか。自分では結構気をつけていたつもりだったんですけど、あるとき片方の鼠蹊部(そけいぶ)がちょっと腫れていることに気づいて。病院で習ったリンパドレナージをしてみたり、脚を上げてみたりしたんですけど元に戻らなくて、それどころか違和感が広がってだるくなったんです。上から見たときに左右の足の太さとか、鼠蹊部の高さが違うし、触った感触も水っぽいものが肌の下に溜まってるような感じなんですよね。

水田さん

むくむ、腫れる、重だるい、肌が張って硬くなるといった症状があらわれるリンパ浮腫と、上手に付き合っていけるような商品をつくろうと思ったのは、病気をしてから7年以上経ってからでした。
術後は何年か自分の生き方についてモヤモヤしながら過ごしていたんですけど、少しずつ気持ちも前向きになり、仕事のモチベーションも上がってきたころ、社内の新規事業コンペに応募したんです。リンパ浮腫が原因でおしゃれができなくなるとか、好きなものが着られなくなるっていう悩みを、美容のプロとしてなんとかしたいなと思って。

ストッキングというものを開発したことはないけれど、誰かの力になれるならチャレンジしてみよう、そんな気持ちでスタートしました。

この記事は3本立ての予定です。次回の更新をお待ちください!
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