薬局に処方箋を持っていくと「お薬手帳はありますか?」と聞かれることがありますよね。その名の通り、自分がもらったお薬が記録されている手帳ですが、旅行や災害時に便利なんです。今さら聞けないお薬手帳のこと、薬剤師が解説します。
知っていますか?お薬手帳の役割
持っていくのをうっかり忘れてしまったり、通院時の持ち物が増えて面倒だなぁと思うかもしれませんが、お薬手帳は大事なもの。災害や薬害事件を教訓に作られたツールであり、患者さんの安全を確保する役割があります。お薬手帳をうまく利用することで、医薬品を安全に使ったり、費用を抑えることもできます。
各医療機関の間では、処方記録は基本的には情報共有されていません。
そのため、複数の医療機関への受診がある方は、同じ医薬品が処方されたり、飲み合わせの悪いものが処方されたりするリスクも。お薬手帳を病院や薬局で提示することで、医薬品の重複や飲み合わせを確認できます。
お薬の飲み合わせで事故が…。お薬手帳ができたワケ
お薬手帳が作られるきっかけとして1993年に起こった「ソリブジン事件」があります。帯状疱疹の特効薬として発売されたソリブジンは、5-FUという抗がん剤と一緒に服用すると重大な副作用が現れることがあります。
当時お薬手帳はなく、他の病院でもらっている医薬品については自分で申告する以外に方法がなかった時代。ソリブジンと5-FU(抗がん剤)が併用され事故が起こってしまい、お薬手帳が作られるきっかけになりました。
●災害を教訓に利用が広がる
お薬手帳の利用が広がるきっかけとして、阪神淡路大震災や東日本大震災のような災害があります。大災害によって病院や薬局の記録がなくなると、お薬手帳に記載されている情報はとても貴重なもの。お薬手帳を持っている一部の人たちはスムーズに医薬品をもらえたため、災害をきっかけにお薬手帳の重要性が世間に知られるようになりました。
日本は地震も多く、これからの時期は台風も多く襲来します。災害に備えるという意味でも、日頃からお薬手帳を活用をおすすめします。
これで安心!お薬手帳に書いておきたい情報4つ
医薬品をもらう以外で、お薬手帳を開いてみたことはありますか?
医療機関で処方された医薬品の情報以外にも、さまざまな情報を記載できます。患者さん自身の情報を記載することで、思わぬ副作用を防ぐことにもつながります。
1. 緊急時の連絡先
氏名は書いている方も多いと思いますが、連絡先はいかがでしょうか?お薬手帳に連絡先を書くことで、思わぬトラブルで病院に運ばれた時に、家族への連絡などがスムーズに行えます。
2. 副作用歴
過去に医薬品を服用して副作用が起きたことがある場合は、副作用を起こした医薬品と具体的な症状を記載しましょう。過去に副作用を起こしたことがある医薬品が処方箋に記載されていた場合、薬局で確認できます。
3. 常用しているサプリメントの有無
健康のために、サプリメントや健康食品で栄養を補っている方も多いですよね。しかし、それらの中には医薬品の作用に影響するものも存在します。常用している場合は、お薬手帳に記載しましょう。
4. 常用している市販薬の有無
市販薬の中には、医療用医薬品と同じ成分を含んでいる製品も存在します。市販薬と医療用医薬品を併用すると成分が重なって、副作用のリスクが高くなるので注意が必要です。
意外と知らないかも?便利なお薬手帳の活用法
お薬手帳は、病院で処方してもらったお薬の記録の確認以外にも便利な活用法があります。
●サプリメント、市販薬、医療用医薬品の飲み合わせの確認
お薬手帳を持っていると、サプリメントや市販薬を購入する際に、病院から処方された医薬品との飲み合わせを相談できます。サプリメントを飲んでも良いのか、あらぬ副作用がでないか、薬剤師や登録販売者に確認して購入すると安全です。
●緊急時や旅行時に薬を処方してもらえる。
外出先で救急車で運ばれた時や、急遽医薬品が必要になったときにお薬手帳を活用できます。とくに意識がない状態で救急搬送されたとき、手帳があれば適切な治療のための貴重な情報源になり得ます。
もうすぐ夏の行楽シーズン。「今年こそ旅行に!」と計画している方も多いのではないでしょうか。旅行中の急な体調不良などがあった場合は、現地の医療機関でお薬手帳を見せることで、治療の判断がしやすくなります。
●お薬の費用が抑えられる
2016年の調剤報酬改定から、お薬手帳を薬局に持参するとお薬代が安くなるようになりました。しかし「6ヶ月以内に1回利用した薬局で、2回目以降から安くなる」という条件があるので注意が必要です。
とくに定期的に通院している場合は、一つの薬局に絞り、お薬手帳を持参した方がお薬代を安くできます。お薬代は、保険医療の負担割合によって異なりますが、10〜40円ほど安くなります。
お薬手帳 まめ知識
●1冊で管理する(複数持たない)
お薬手帳を病院ごとに使い分けると、各病院の処方薬の飲み合わせや、時系列が判別しにくいので、お薬手帳の機能を発揮できません。手帳は1冊で管理しましょう。
●必要なら薬局で無料でもらえる
お薬手帳は、薬局で無料配布されているので、必要なら薬局の受付に伝えましょう。また、使い切った場合も、新しい手帳をもらうことができます。
●アプリも続々!スマホでも管理できる
日本薬剤師会やさまざまな企業がお薬手帳アプリを開発していますが、大まかな機能は同じです。薬剤情報に記載されているQRコードでアプリにお薬の情報を読み込ませて管理するので、手帳本体を持ち歩いたり、シールを貼る手間や紛失の心配がありません。
●忘れてしまった場合はどうなる?
忘れてしまった場合は、医薬品の飲み合わせが確認できない場合もあるので注意が必要です。普段から利用している薬局であれば情報を持っているので問題はありませんが、初めて利用する薬局で気になる場合は、医薬品をもらって帰宅したあと、改めて手帳を確認し、薬局へ連絡すると安心です。
いかがでしたか?
お薬手帳ができた経緯から、さまざまな活用法をご紹介しました。保険証と同じく携帯して、便利に使いましょう。
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