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患者さん その後の暮らし YUKOさん

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Masselでもとくに多くの方に読まれてきた、治療中の患者さんを追ったライフスタイル密着取材。治療をしながらの過ごし方や愛用品について教えていただきました。その後はどのように生活されているのだろう?治療を経てどんな気持ちの変化があったのだろう? Masselがまだスタートしたばかりの時にお話しを聞かせていただいたYUKOさんに再び会いに行きました。

プロフィール
YUKOさん(60歳) 神奈川県
〔家族構成〕夫と2人暮らし
〔がんの部位〕乳がん ステージⅡb(2014年告知)
〔治療の経緯〕抗がん剤→温存手術→ホルモン療法→リンパ浮腫の手術(4回)→ホルモン療法を続けながら経過観察中

はやく元に戻りたい!と無理してしまった時期も

たしか前回の取材は抗がん剤治療を終えたばかりの時でしたね。
あのあと手術をして、それから半年後くらいでしょうか…手術した方の腕に時計をつけてしまって、あたっていたところがかゆくて、虫さされだと思って何気なくかいてしまいました。さらに真冬だったんですけど、趣味のフラダンスのイベントで寒い屋外で踊っていて。その夜、かゆさに加え、寒気、そして高熱が出たんです。『リンパ浮腫』『蜂窩織炎(ほうかしきえん)※』という知識はあったので、すぐ病院へ行きました。虫刺されだと思ってかいてしまった場所から菌が入ってしまったんです。

はやく元気になりたい、元に戻りたい、という気持ちが強くいろいろ無理をしてしまった時期でもありました。リンパ浮腫との付き合いは、そこからはじまりました。
※リンパ浮腫の患部におこる急な炎症のこと

リンパ浮腫の治療について
リンパを流すマッサージをしたり、リンパ浮腫専用のサポーターをつけて生活したり、日常的にケアしながらリンパ管をつなぐ手術を4回しました。全身麻酔で1回でやられる方もいますが、私の場合は局部麻酔で回数をわけて行いました。2泊3日の入院で手術は2時間くらい。手術中モニターでつなげている様子を見ていました。3回目くらいでかなり改善され、手の甲がむくむこともなくなりました。以前は左右で腕の太さが違うのがわかりましたが、今はパッと見わからないくらいです。

リンパ浮腫用の弾性スリーブ

それとリンパ浮腫専門のナースの方が開業されているケアサロンとの出会いも大きかったです。自分でケアしても、どうしても肘に溜まってしまうんです。フラダンスを習っていて腕を露出することも多く、誰も見てないかもしれないけど自分が気になるんですよね。それでもうちょっとなんとかしたくて検索してそのサロンを見つけました。サロンでの施術に加え、日々のケアも教えてくださり、格段によくなりました。

ホルモン療法の副作用?それともお年頃?

ホルモン療法は再発防止のために術後2週間くらいから、飲むタイプのものを今も続けています。飲みはじめた最初の1ヶ月で、手のこわばりや関節の痛みなどの副作用が出てきました。でも薬剤師さんから「最初の1年間はいろいろあるけど、みんな落ち着いてくるから大丈夫」という魔法の言葉をいただいて続けられました。それに更年期の症状が出てくる年齢なので全部が全部、薬の副作用とも言えないですよね。主治医の先生からも「お年頃だからね」と言われて。なるほど、お年頃なのね、と(笑)

お年頃(更年期)に罹患する方は多いと思います。先生に、もしホルモン療法をやめたらこの症状はなくなりますか?と聞いたのですが「それはわからない」と言われました。今はそんなのどっちでもいいじゃない!と思えるようになりました。症状が落ち着けばいいんです。ホルモン療法をして1ヶ月はつらかったけど、そのあとは身体が慣れたのか落ち着きました。

大きな気持ちの変化

前回取材していただいた時は鎌倉に住んでいましたが、今は横浜です。娘家族の家との距離も近くなったのでけっこう会ってますね。いつのまにか孫が3人もいるんですよ。それで娘の3人目の出産と同時に仕事も辞めました。「仕事している=社会とつながっている=元気!」だと思っていたんですけど、そんなことないんじゃないかなと思ったのがきっかけになりました。

以前は大きな手帳に1日4つくらい予定入れて、ひとつひとつクリアしていくのが気持ちよくて、びっしり予定が埋まってるのが充実した1日、という感じだったんですけど今はそうは思わないんですよね。穏やかな気持ちです。
いまは孫の行事のフォローをしたり、夫のお弁当をつくったり…近くにいる人を応援したい。たぶん、ゆったりとした時間を受け入れられるようになったんです。ずいぶん時間がかかりましたけど(笑)

趣味のフラはずっと続けてます。抗がん剤治療中も白血球の数値が上がる時期に月に2回くらいやっていましたが、ここにも気持ちの変化がありました。以前は抗がん剤で抜けた髪を早く伸ばして元のように踊りたい、という表面的な感覚だったんです。
けれど今年に入ってからそういうことじゃなく、ちゃんとフラのストーリーを伝えられるようにしたい、と思うようになりました。50歳からはじめてちょうど10年です!

リンパ浮腫を抱えての旅、おすすめグッズ

リンパ浮腫の方が飛行機に乗るのは、とても勇気がいることだと思います。たとえリンパ浮腫がなくても大きな手術の後の旅行は挑戦だし、怖いこと。でも、大丈夫です。コロナ前になるんですけど、娘がイギリスに転勤していたときに訪ねて行きました。そのときのことをちょっとお話ししますね。

まず気圧。これは酔い止めを飲んで乗り切りました。それとスリーブ(リンパ浮腫用の腕のサポーター)を機内では着用していました。はずして腕のマッサージができるように、夜用のやわらいタイプ。それと予約時も「リンパ浮腫があってマッサージをするので、端の席にしていただけるとありがたいです」とお願いしてみたら、聞いてくださったので助かりました。機内では腕をすこし高く上げてマッサージしました。

日焼け止めや酔い止め、漢方は欠かさず持参

海外だけじゃなく国内旅行でも、ケアグッズは持って行きます。あと知らない土地はストレスも多いので、気持ちをリラックスさせるアロマとか。
術後の旅行はハードルが高く感じるだろうし、ましてや新型コロナウイルスもまだ安心できないので難しい部分もあるとは思います。でも、自分にとって無理のない範囲で工夫をすれば、できることもあるということをお伝えしたい。私がここで話すことでリンパ浮腫の方も勇気を持っていただけたら嬉しいです。

7年前の自分に伝えたいこと

よ~くがんばった!大丈夫!ハナマル、と7年前の自分には言ってあげたいですね。
それと、意外と忙しいけどあんまり慌てないでね、かな。

はじめてがんを告知された方はわからないことだらけで、不安がどんどん膨らむと思うんです。私も手術した側の左手が上がらなかったのが不安でした。45度くらいしか上がらなくって、これからどうなっちゃうんだろうって。理学療法士さんのマッサージで上がるようになりました。自分で必死にリハビリしたわけでもないんですよ。毎日の生活の中で自然に。そう考えると、そんなにがんばらなくてもいいのかな、と。これは今だから言えることです。

(過去記事リンク)
YUKOさんにはじめてご登場いただいたときの記事はコチラ

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