新型コロナウィルスが5類に移行後、はじめての年末年始がやってきます。久しぶりに賑やかな集まりや飲み会が再開される一報を、受け取った方も多いのではないでしょうか。
周りの華やかムードとは裏腹に、この1年でがんを宣告され、大きく生活や環境が変わってしまった方は、逆にこころが沈みがちかもしれません。
今回は、年の瀬のあわただしさのなかで、こころ穏やかに過ごせるコツについて紹介します。年末年始の飲み会への参加をどうするか、久しぶりに会う友人や親戚に何気なく「最近どう?」と聞かれたとき、どのように答えるかについて一緒に考えていきましょう。
職場の年末年始の飲み会、参加する?しない?
年末年始は、職場の忘年会や新年会などの飲み会が増える時期。がん治療中の方にとっては、どうしたらいいか悩ましいところです。
●新型コロナウィルスが下火になったとはいえ、他の感染症も。
新型コロナウイルスが下火になったとはいえ、冬はインフルエンザなどの感染症が流行する季節。がん治療中は特に免疫力が低下しているため、大人数の集まりは極力控えることをおすすめします。人混みや密閉された空間での飲み会は感染リスクを高める可能性があるため、まずは自分の健康と安全を最優先に考えてください。
●治療中はお酒を飲んでいい?
がん治療中の飲酒については、主治医に相談が必要です。たとえば、抗がん剤治療を受けている場合、飲酒は副作用を強めたり、治療効果に影響することがあります。お酒を楽しみたい場合は、必ず主治医に相談し、飲酒ができるのかどうか、適量、タイミングについて確認しましょう。
●職場の集まり(忘年会/新年会)カドの立たない断り方は?
仕事をしている方にとって、忘年会や新年会をどう断るかは、悩むところですよね。
職場の飲み会を断る場合、カドの立たない表現を心がけることが無難です。たとえば「最近体調を崩しやすいので、しばらく飲み会は控え目にしてます」と伝えることで、理解を得やすくなります。日頃の雑談のなかで、それとなく同僚や上司に話しておいてもよいでしょう。
●誘われたときに、あえて病気を伝えるのもアリ?
がん治療中であることを職場の人に伝えるかどうかは、個人の判断によります。まずは「状況を理解してもらいたいのか」「周囲のサポートを求めているのか」など、自分の考えをはっきりさせることが大切。自分ができることやできないこと、協力してほしいことなどを具体的に考え、この機会に伝えてみるのもひとつの方法です。
たまにしか会わない親族や友人に、病気を伝える?
年末年始は、普段あまり会わない親戚や友人に顔を合わせる機会が増えます。どのように自分の状況を伝えればいいのか、そもそも伝えるべきなのかどうか、迷う方は多いでしょう。
●「最近どう?」と聞かれたときの答え方
「最近どう?」という言葉はごく当たり前の質問ですが、がん治療を受けている方にとっては複雑な心境になるもの。大切なのは、自分自身の感情を優先させることです。もし、病状について伝えることに抵抗やストレスを感じる場合、無理に話す必要はありません。「いろいろ忙しかったけど、今は落ち着いています」といったあいまいな答え方でも十分です。聞かれたときのため、あらかじめ答え方のパターンを準備しておいてもよいでしょう。
●場の空気を壊さずに病気について伝えるコツ
病気について伝える場合は、ポジティブな面を強調することが場の空気を壊さないポイント。たとえば「大変な経験をすることになったけど、毎日を大切に過ごしています」などと伝えると、相手に心配をかけず前向きなイメージを持ってもらいやすくなります。
●伝える人と伝えない人を分けるのもアリ?
がん治療をしている事実を伝えるかどうかは、相手との関係性によります。がんであることを伝えたり、こころの内を聞いてもらうことで、自分が安らぐ相手かどうかを考えてみてください。同じ友人グループや、親族だからといって、その場にいる全員に伝える必要はありません。
●ウワサが独り歩きしたら嫌だな…と思ったら
ウワサが広まることに不安を感じる場合は、伝える人を最小限にすることが重要です。たとえば、親友にのみ伝えて、他の友人には治療が終わるまで知らせない、などです。また「他の人には話していないことだけど…」としっかり前置きし、自衛することも大切です。
ハッピーな雰囲気や近況報告に、落ち込んでしまいそうになったら
年末年始の華やかな雰囲気や、明るい近況報告に「なぜ私だけ?」と、こころが落ち込みそうになることもあるかもしれません。そんなときのアドバイスを3つ紹介します。
●感謝日記をつける
毎日のちょっとした幸せや良かったことを日記に書きとめてみましょう。たくさん書く必要はありません。箇条書きで3つ書き出してみてください。冬の静かな時間にこころを見つめ直すことで、前向きな思考にシフトしやすくなります。
●好きなことや趣味に集中してみる
好きなことに集中してみるのも、ネガティブな感情から離れる方法のひとつ。たとえば、読書や編み物など室内で楽しめる趣味であれば、冬の寒い季節を充実させるのにピッタリですね。
●身体を温める
身体が冷えると血流が悪くなり、不調や疲労を感じやすくなります。逆に身体を温めると副交感神経が刺激され、リラクゼーション効果が高まります。温かい飲み物を飲んだり、ゆったりバスタイムを楽しんだりしながら過ごすのも効果的です。
いかがでしたか?
この時期特有の雰囲気は、がん治療中の方にとって別世界のように感じられ、孤独感を強めてしまう時期でもあります。ぜひ、自分にとって心地良い方法を見つけて新年を迎えてく ださい。寒さが増していく季節、こころ穏やかな時間を過ごしていただけますように。
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