抗がん剤治療をはじめると、副作用により髪の毛などの脱毛が起こります。しかし、具体的にいつから脱毛が始まるのか、脱毛時はどのように頭皮をケアすれば良いのか、疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
ここでは、抗がん剤治療で髪の毛が抜ける理由や、脱毛や発毛が始まる時期、治療中の頭皮ケアなどについてお伝えします。これから抗がん剤治療を予定している方は、安心して治療を受けるためにも、ぜひご一読ください。
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抗がん剤治療で髪の毛が抜ける理由
抗がん剤治療を受けると、副作用で脱毛が起こります。その理由は、細胞分裂が活発な毛母細胞がダメージを受けるためだと考えられています。
毛母細胞は、細胞分裂により髪の毛を作る細胞です。抗がん剤は、細胞分裂が活発な細胞に影響を与えやすいといわれます。このような事情から、治療にともなう脱毛の症状に備えて、医療用ウィッグ(かつら)を利用する患者さんや、帽子やバンダナなどの小物を使う患者さんもいらっしゃいます。
特に医療用ウィッグは、着用すると治療前と変わらない見た目をキープできるのが魅力です。自分に合った方法で工夫しながら、気になる脱毛部分をカバーしてはいかがでしょうか。
治療開始後、髪の毛が抜けるのはいつから?
抗がん剤治療を開始してから、髪の毛が抜け始める時期や、発毛する時期、元の状態に回復する時期についてご説明します。具体的な期間についてはあくまで個人差があるため、目安として参考にお役立てください。
髪の毛が抜け始める時期
あくまで個人差がありますが、抗がん剤治療の開始後、1~3週間で脱毛が始まるといわれています。このとき、脱毛する量や脱毛が生じる場所は、治療に使う抗がん剤の種類や、人によって個人差があります。また、髪の毛だけでなく眉毛やまつ毛、体毛なども抜ける場合があります。
想像よりも多くの髪が抜けてショックを受けてしまう方や、発毛に不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、多くの患者さんは治療が終わると、少しずつ発毛し、元の状態に回復しています。
発毛し、元の状態に回復する時期
あくまで個人差がありますが、抗がん剤の投与が終了すると約1~2カ月で発毛し始めるといわれています。その後、髪が伸びてベリーショート程度のヘアスタイルが成立するまでの期間は、1年半~2年程度です。医療用ウィッグをお使いになる場合は、薬剤の投与が始まってから元の状態まで回復するまでの期間に着用します。
発毛が始まってからも、髪が十分に回復するまでの時期はウィッグが必要です。約1年半~2年は、ウィッグを着用して日常生活を送ることを理解しておきましょう。
治療中における頭皮ケア
抗がん剤治療中は、頭皮へのダメージを避けるため、いくつか気をつけるべき点があります。抗がん剤治療による脱毛が始まったら、以下のポイントを参考に頭皮ケアを行いましょう。
髪の毛を無理に抜かない
脱毛が始まったからといって、髪の毛を自ら抜こうとするのはやめましょう。髪の毛を抜いた際に毛根が傷つくと、発毛が遅れてしまう可能性があります。また、抗がん剤治療前と髪質が変化し、治療後にくせ毛になる原因にもなり得るため、無理に髪の毛を抜かないようご注意ください。
頭皮マッサージや育毛剤の使用を控える
抗がん剤治療中は、頭皮の血行を促進しやすい頭皮マッサージや、育毛剤の使用は控えましょう。血行が促進されると、抗がん剤の影響が大きくなるおそれがあります。頭皮マッサージや育毛剤の使用は抗がん剤治療が終わり、1~2カ月程度が経過してからにしましょう。ミノキシジルが配合された育毛剤などを使用すると、発毛効果を得やすい傾向がありますが、商品選びは慎重に行うことが重要です。
また、発毛後には、医療ヘアケアサービス・プフレケアの「スカルプエステ」がおすすめです。スカルプエステでは、頭皮の状態をチェックしたうえで、毎日のケアでは落としきれない頭皮の汚れを洗い落としつつ、仕上げに頭皮マッサージを行います。心地良く頭皮環境を整えられるので、頭皮ケアでお悩みの方はぜひご利用ください。
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頭皮を清潔に保つ
脱毛により髪の毛の量が減っても、頭皮が汚れにくくなるわけではありません。頭皮から分泌される皮脂の量は、皮脂分泌が多いとされる額(ひたい)の2倍以上ともいわれており、何もせずにいると不衛生な状態になってしまいます。可能なら、毎日の入浴のたびに頭皮や髪の毛を洗い、清潔な状態を保っておくと安心でしょう。
医療ヘアケアサービス・プフレケアの「頭皮リフレッシュパック」は、抗がん剤治療中の方でも、脱毛症状が落ち着いたタイミングで受けられる頭皮ケアのメニューです。クリームパックで頭皮の皮脂をクレンジングすることで、頭皮を清潔に保てます。特に、頭皮や髪の毛のベタつき・ニオイが気になる方におすすめです。
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刺激の少ないシャンプーを使用する
抗がん剤治療中は頭皮がデリケートな状態になりやすいため、刺激の少ないアミノ酸系、または石鹸系のシャンプー・コンディショナーを使用すると良いでしょう。ただし、いずれのヘアケア用品を使用した場合でも、頭皮にかゆみ・ふけ・炎症などの異常が発生したら、速やかに医療機関を受診してください。
髪の毛はやさしく洗う
髪の毛は、次の流れで洗いましょう。
- ぬるま湯で髪の毛や頭皮の汚れをすすぐ
- 手のひらや泡立てネットなどを使い、シャンプーをできるだけ細かく泡立てる
- 泡立てたシャンプーを髪の毛に付け、指の腹で揉むようにやさしく洗う
- 泡が残らないようぬるま湯でしっかりとすすぐ
- やわらかいタオルでやさしく水分を拭き取る
シャンプーを細かく泡立てる代わりに、泡で出てくるタイプのシャンプーを使っても構いません。髪の毛を洗う際には、爪を立てたり、強くこすったりしないよう気をつけてください。
抗がん剤治療による脱毛の対処法
抗がん剤治療による脱毛には、医療用ウィッグや帽子、マスクなどの対処法があります。医療用ウィッグの専門店「レディススヴェンソン」の直営サロンでは、医療用ウィッグや帽子など、治療中に活用できるアイテムを取り扱っているので、お気軽にご相談ください。
以下では、脱毛の対処法について詳しく確認していきましょう。
医療用ウィッグ
「医療用ウィッグ」とは、抗がん剤治療中に、脱毛部分をカバーする目的で着用するウィッグ(かつら)のことです。おしゃれを目的に着用する「ファッションウィッグ」とは異なり、頭皮がデリケートな時期でも安心して使える品質をもったウィッグです。
医療用ウィッグを着用することで、治療前のヘアスタイルを再現したり、理想のヘアスタイルを実現することが可能です。
なお、医療用ウィッグの概要・価格帯・選び方など、さらに詳しい情報は以下の記事でご説明しているので、併せて参考にしてください。
医療用ウィッグとファッションウィッグの違い|選び方のポイントは?
帽子
帽子は、脱毛部分をカバーするだけでなく、頭皮の保護や保温にも役立ちます。医療用に作られた帽子の場合、家のなかで着用するもの、外出時に着用するもの、就寝時に着用するものなどと目的に応じて使い分けると良いでしょう。なお、帽子の代わりにスカーフやバンダナを活用している方もいます。
マスク
抗がん剤治療による脱毛の影響を受けるのは、髪の毛だけではありません。たとえば、ほこりなどの細かな異物が体内に入り込まないようにしたり、鼻の粘膜の乾燥を防いだりする役割を持つ鼻毛も、脱毛が起こる可能性があります。
鼻毛の脱毛が起こると、上記のような役割が損なわれてしまうため、鼻を保護するためにマスクを着用することが大切です。
サングラス・メガネ
鼻毛と同様に、まつ毛や眉毛も抗がん剤治療の影響で抜けることがあります。まつ毛や眉毛の脱毛が起こると、ゴミやほこりなどの異物が目に入りやすくなるでしょう。目が傷ついたり、炎症を起こしたりしないよう、外出時には、サングラスやメガネをかけて生活することをおすすめします。
抗がん剤の投与終了後に起こる髪の毛の変化
抗がん剤投与が終了すると、しだいに頭髪が回復してきます。このとき、発毛にともない「くせ毛」や「白髪」が生じることもあるようです。最後に、インターネット調査の結果を基に毛髪の変化についてご紹介します。
抗がん剤治療後の発毛時に、くせ毛や白髪が生える場合があります。これらの症状は、決して珍しいものではありません。以下でご紹介するインターネット調査でも、多くの患者さんがくせ毛や白髪の症状を体験していることがわかります。髪の毛に変化が起こる可能性について、十分に理解しておきましょう。
抗がん剤治療による脱毛を経験された方を対象にした調査では、投薬終了後の発毛時に感じた症状として、「くせ毛が生えてきた」の回答が最も多い結果となりました。頭頂部・生え際・それ以外のどの部位でも、同様の結果となっています。
次に多かったのは、「白髪が生えてきた」「髪が伸びにくい」などの回答です。また、治療後の髪質については、「細くなった」と感じる方が全体の69.8%を占める結果となりました。
一方で、髪の毛が元の髪質に戻った期間については、頭頂部・生え際・それ以外のどの部位でも「1年程度」の回答が最も多く、「半年~1年程度」で元の髪質に戻った方が約半数でした。このように、頭髪が回復してからくせ毛や白髪の症状が現れるなど、一時的な髪質の変化でお悩みになる方もいらっしゃいます。しかし、これらの症状は時間の経過とともに改善されるケースもあるのです。
抗がん剤治療中は医療用ウィッグをお役立てください
今回は、抗がん剤治療の副作用で髪の毛が抜ける理由や、脱毛や発毛が始まる時期、治療中の頭皮ケアなどをお伝えしました。
個人差はありますが、一般的には抗がん剤治療開始から1~3週間で脱毛が始まり、治療終了から約1~2カ月で発毛が始まるといわれています。その後、元の状態に回復するまでの期間は約1年半~2年が目安です。
抗がん剤治療中は、髪の毛を無理に抜かない、刺激の少ないシャンプーを使用するなど、頭皮へダメージを与えないケアを心がけてください。また、脱毛による見た目の変化にショックを受けてしまう方や、回復に不安を感じてしまう方も少なくありません。そのようなときに、医療用ウィッグや帽子・マスクなどのアイテムを活用すると、気持ちが落ち着きやすくなるでしょう。
医療用ウィッグの「レディススヴェンソン」が全国各地に展開する直営サロンでは、医療用ウィッグはもちろん、その他のアイテムも豊富に取り扱っています。また、全店に経験豊富な美容師や毛髪技能士がおり、治療中の頭皮ケアや外見ケアなど、さまざまなサービスやアドバイスを提供可能です。ぜひ安心してご相談・ご利用ください。
齊藤典充 先生
なごみ皮ふ科 院長 医学博士
1993年 北里大学卒業、同大学皮膚科に入局。
1998年~2000年 米国カリフォルニア大学サンディエゴ校留学。
国立横浜病院(現:国立病院機構横浜医療センター)皮膚科、北里大学皮膚科助手、講師、国立病院機構横浜医療センター皮膚科部長、横浜労災病院皮膚科部長、米元皮膚科医院副院長を経て、2020年10月より現職に至る。専門は脱毛症、アトピー性皮膚炎。日本皮膚科学会の脱毛症に関する診療ガイドラインの作成に携わるなど、長年、診療の第一線で脱毛治療・研究の分野をリードしている。
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