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【薬剤師監修】がん治療とサプリメントの相性

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ビタミンや鉄分、DHAなど、日々の食事では満足に摂りづらい栄養素を補ってくれるサプリメント。健康だけではなく、美容のために常用している方も多いのではないでしょうか。
がんに罹患すると、より健康に気を遣うものですが、なかには処方薬や抗がん剤と相性の良くない製品(成分)もあります。
これからサプリメントを取り入れようと検討している方も、参考にしてみてくださいね。

サプリメントと抗がん剤

サプリメントの中には、がんの治療薬の効果を弱めたり、副作用を出やすくしたりするものが存在します。がん治療薬を含め、医薬品というものは、肝臓に存在する酵素によって分解され、腎臓を通して排泄されます。

サプリメントと抗がん剤

サプリメントの中には、肝臓に存在する酵素の働きを強くしたり、弱めたりするものも存在します。それにより肝機能が低下し、がんの治療そのものが継続できなくなるリスクもあります。過去には、実際にがん患者がサプリメントを服用していたため、がんの治療ができなかった例も存在するので注意が必要です。

抗がん剤治療中に気をつけたいサプリメント

抗がん剤に対して影響する可能性のあるサプリメントは、意外と多いので注意が必要です。これからサプリメントの服用を検討している方は、自分で判断せず医師などの専門家に相談しましょう。

●ビタミンA
ビタミンAは、目や皮膚、粘膜などの健康を保つために必要であり、免疫力の維持にも重要なビタミンです。しかし、抗がん剤治療を受けている場合は、ビタミンAのサプリメントは避けた方が良い場合があります。

ビタミンA

白血病の治療薬の中には、ビタミンAと化学的構造が似ているものが存在し、ビタミンAのサプリメントと併用することで、ビタミンAの過剰症を引き起こす可能性があります。ビタミンAを過剰に摂取することで、肝機能障害や骨障害などのリスクを高めます。

●コレステロール対策の特保食品
サプリメントとは少し違いますが、特保食品も健康のため常用していませんか?
特保食品に含まれる成分の中には、胆汁酸と結合する働きを持つものがあります。胆汁酸は、脂肪の吸収やコレステロールの代謝に必要な成分です。

コレステロール対策

コレステロール対策の特保食品を使っていると、油に溶けやすい性質の医薬品の吸収を減らす可能性があります。抗がん剤にも油に溶けている薬剤が存在するので、健康に良さそうだからといって、特保食品の摂りすぎには注意しましょう。

●ハーブ
お薬と飲み物の相性を紹介した記事で、お薬に対して影響するハーブについて取り上げました。
ハーブの成分が入ったサプリメントやお茶のなかには、肝臓の酵素の働きを強くしたり、女性ホルモンに影響して、ホルモン療法の副作用が強くあらわれる可能性があります。

ハーブティー

また、痛み止めや睡眠導入剤の効果にも影響する場合もあるので注意が必要です。薬と飲み合わせに注意が必要なハーブには、セントジョーンズ・ワートやノコギリヤシ、カモミールなどがあります。

●ローヤルゼリー

ローヤルゼリー

ローヤルゼリーには、エストロゲンに対して働きかけるため、乳がんや子宮体がんなど女性特有のがんに対して影響したり、ホルモン療法の効果が弱くなったりする可能性があります。

●アガリクス
アガリクスによって肝機能に問題が生じる可能性があります。過去には、アガリクスを使用していた29歳の乳がん患者が肝炎を発症したため、抗がん剤による治療ができなかった例も。

アガリクス

肝機能に問題が生じると、抗がん剤以外の痛み止めや睡眠薬、便秘薬などがん治療を支える医薬品の使用にも影響が出るので、つらい症状を抑えられない可能性もあります。

●メシマコブ
アガリクスと同じように、薬用キノコとして民間療法で使われてきました。アガリクスと同様に肝機能に問題が生じる場合があるので注意が必要です。

メシマコブ

メシマコブの使用によって肝炎を発症してがん治療が遅れた事例があります。また、メシマコブを使用した男性が、間質性肺炎を発症したと報告されています。

サプリメント以外にも!市販薬も注意が必要

抗がん剤を服用しているときは、サプリメントはもちろん、市販薬の使用にも注意が必要です。医師の診断なしに購入できる市販薬は便利ですが、抗がん剤との飲み合わせによって副作用があらわれる可能性があります。

●解熱鎮痛薬
がんの症状が進行すると痛みが出ることもあります。痛みや熱を抑えるために、様々な痛み止めが処方される場合が多く、市販の解熱鎮痛薬は過剰に服用する可能性があるので注意が必要です。

市販の解熱鎮痛薬

多量に飲んでしまうと、胃腸障害や肝機能、腎機能に問題が生じる可能性もあります。解熱鎮痛剤は必ず医師に処方してもらい、用法容量を守りましょう。

●漢方薬
がん治療に伴うつらい症状に対して、漢方薬が処方されることが多くなりました。近年では、漢方薬の効果が見直されるようになり、治療効果についても研究が進められています。しかし、漢方薬にも副作用や飲み合わせに注意が必要な薬剤が存在します。

漢方薬

漢方薬の約7割に配合されている「甘草」は、むくみや血中カリウム値の低下を引き起こすことがあります。血液中のカリウム値が低下すると筋肉がうまく動かなくなり、脱力感や不整脈などの症状が現れます。甘草に含まれている成分は、市販薬や肝臓の薬などにも使われている場合があるので、自分で漢方薬を購入する場合は気をつけた方が良いでしょう。

がんに効くサプリメントはある?

残念ながら、がん治療に効果があるサプリメントは存在しません。
サプリメントや健康食品は、病気を治すための「医薬品」ではなく「食品」に分類されています。また、サプリメントや健康食品以外の民間療法についても、科学的、医学的にがんに対する効果が証明されたものが存在しないため、標準治療の代わりになることはありません。

がん治療中に、サプリメントや市販薬を常用することで、標準治療ができなくなる可能性もあります。サプリメントや市販薬を検討している場合は、医師や薬剤師に相談して、安全に使用しましょう。

薬剤師/医療ライター廣瀬安國

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