【専門家監修】抗がん剤による爪の副作用ケア｜セルフケアの基本とおすすめグッズ4選

今日からはじめる爪の副作用対策！セルフケアの基本
爪の副作用対策に！弱った爪の切り方（ファイリング）
初心者でも大丈夫！爪ケアグッズの選び方・使い方のコツ
まとめ：基本的なケアを知って、がん治療中の生活を快適に

「抗がん剤治療が始まってから、爪の色が黒っぽく変わってきた」「指先がズキズキと痛み、爪がもろくなって少しぶつけただけで割れてしまう」…抗がん剤が及ぼす爪への副作用の症状に、多くの方が不安や戸惑いを感じています。
この記事では、前回に引き続き、抗がん剤治療の副作用として現れる爪のさまざまな症状について、今日からすぐに始められるセルフケアやグッズまで、専門家の知見を基に分かりやすく解説します。

【この記事は連載です】連載1回　抗がん剤による爪の副作用ケア｜原因と今日からできるセルフケアはこちら >>

私がこの記事を監修しました
NPO法人インターナショナルネイルアソシエーション理事長
一般社団法人アピアランス・サポート東京理事
一般社団法人トータルアピアランス実践研究会理事

監修者の著書「がん治療における爪のアピアランスケア」はこちら >>

今日からはじめる爪の副作用対策！セルフケアの基本

つらい爪の副作用症状を和らげ、悪化させないためには、日々のセルフケアが何よりも大切です。
最初から完璧に、全部しっかりやらなくちゃ！と構える必要はありません。
基本となるのは、「清潔」「保湿」「保護」という3つのシンプルな約束です。
これらを毎日の生活ルーティンのなかに組み込み、コツコツ続けることがあなたの爪を守り、がん治療中の生活を快適に過ごすことに繋がります。

爪の副作用対策セルフケアの基本1 清潔に保つ

爪や指先を清潔に保つことは、爪囲炎などの細菌感染を防ぐための第一歩です。
汗や汚れが残っていると、細菌が繁殖しやすくなり炎症の原因となります。
ただし、洗いすぎや強い洗浄剤は、かえって皮膚のバリア機能を損なうため注意が必要です。
やさしく、かつ丁寧に洗うことを心がけましょう。

● お湯の温度
38〜40℃程度のぬるま湯。人肌程度のお湯で、40℃以上の熱いお湯は避けましょう。
ぬるま湯と感じる、心地よい温度がおすすめです。水の温度で手洗い効果に差はありませんので、あくまで自分の感覚で大丈夫。ただ熱いお湯は手荒れの原因になるので避けましょう。

● 洗浄剤（せっけん、ハンドソープ）
よく泡立てた低刺激性のせっけん。殺菌力の強いせっけんや、スクラブ入りのものは避けましょう。
弱酸性～中性のマイルドな成分で無香料のものがおすすめです。さらに保湿成分が入っていればなおいいですが、絶対必要な機能ではないので使用感の好みで選びましょう。抗菌・消毒成分入りは刺激が強いため、常用は避けましょう。
また、泡タイプの洗浄剤を使用する場合は1プッシュでてくる洗剤の量がすくなくなりやすいため、必要に応じて複数回プッシュするなど量の調整を行いましょう。

● 洗い方
乾いた手に洗浄剤を擦り込むのではなく、しっかり濡らしてから泡立てることで皮膚への刺激を減らすことができます。指の腹でやさしくなでるように洗いましょう。爪ブラシを使用して、爪の間の汚れや菌も除去しましょう。

● 拭き方
柔らかいタオルで指先を包み、押さえるように拭きます。タオルでゴシゴシ擦らないようにしましょう。

爪の副作用対策セルフケアの基本2 保湿をする

抗がん剤治療による爪の副作用症状の多くは、「乾燥」が引き金となっています。
前回の連載でも解説しましたが、抗がん剤はがん細胞だけでなく、新陳代謝が活発な正常な細胞にも影響を与えます。そのため、健康な爪や皮膚の細胞もダメージを受け、水分を保つ力が弱まり、極度に乾燥してしまうのです。

この乾燥が、爪の割れ・欠け、爪の変形、爪周りの皮膚のささくれ、といったさまざまな症状につながります。そのため、爪の副作用対策の基本は、失われたうるおいを補い、爪とその周りの皮膚を乾燥から守る「保湿」が最も重要になります。

入浴後や手洗い後、就寝前など、1日に何度も保湿剤を塗る習慣をつけましょう。
とくに新しい爪が作られる爪の根元（甘皮部分）を重点的に保湿し、やさしくマッサージすると指先の血行が促進され、爪の成長を助けます。

保湿だけを目的にしていると忘れがちなので、日常の行動と保湿をセットにしておくと、ルーティンに組み込みやすくなります。
たとえば、皮膚が水分を含んで保湿剤が浸透しやすい「入浴・手洗いのあと」や、洗剤などで油分が失われる「家事・水仕事のあと」がおすすめです。
就寝前に保湿したい方は、枕元やベッドサイドに保湿グッズを揃えておくと、寝る前に忘れずに保湿できます。

爪の副作用対策セルフケアの基本3 保護をする

爪がもろくなっていると衣類に引っかけたり、何かにぶつけた些細な衝撃で割れたり欠けたりする場合があります。
抗がん剤治療の副作用が爪にあらわれている期間は、日常生活における物理的な刺激から爪を守る「保護」を意識することが大切です。
家事や水仕事の際は、必ずゴム手袋を着用しましょう。さらに、その下に綿の手袋をすると保湿効果も高まります。また、外出や就寝時に綿や絹の手袋・靴下を着用すると、爪の保護と保湿もできます。

爪の表面を保護するには、マニキュアのベースコートや、専用のコート剤で保護膜をつくることも効果的です。透明のものやツヤのないマットなタイプなどがあり、マニキュアに慣れていない方でもかんたんに使うことができます。

爪の副作用対策に！弱った爪の切り方（ファイリング）

抗がん剤治療中の弱った爪には、パチンと衝撃を与える爪切りは避けましょう。
爪切りは二枚爪や割れの原因になることがあります。代わりに、爪への負担が少ない爪やすり（ネイルファイル）を使って、爪に負担をかけず長さを整えるのがおすすめです。
ここでは、基本的な使い方を3つのステップでご紹介します。

副作用で弱った爪のケア長さを整える

まず、爪やすりを爪に対して45度の角度にあて、一定の方向にやさしく動かして長さを削っていきます。
のこぎりのように往復がけをすると爪の層が剥がれやすくなるため、必ず一方向に動かすのがポイントです。爪の長さは、指の先端と同じくらいか、少し長めが理想的。爪が皮膚に食い込む陥入爪（かんにゅうそう）の原因になるため削りすぎに注意しましょう。

副作用で弱った爪のケア角をとる

四角く整えた爪の角は、衣類などに引っかかりやすくなっています。
爪やすりを爪の角に当て、少しずつ動かして丸みをつけましょう。反対側の角も同じように取り除きます。

副作用で弱った爪のケアバリを取り除く

爪を削ったあと、爪の裏側に薄い削りカス（バリ）が残ることがあります。
バリがでたら、爪やすりか目の細かいスポンジファイルでやさしく取り除きましょう。

初心者でも大丈夫！爪ケアグッズの選び方・使い方のコツ

セルフケアの効果を最大限に引き出すためには、抗がん剤治療中のデリケートな爪と手肌に合ったアイテムを選ぶことが重要です。
ここでは、ケアのステップごとにおすすめのグッズとその選び方、使い方のコツをご紹介します。

弱った爪のファイリングに！爪やすり「エメリーボード」

エメリーボード
エメリーボードは、爪に負担をかけずに長さを整える紙製の爪やすりです。

目の粗さを表すグリット（G）という単位で区別され、数字が小さいほど目が粗く、大きいほど細かくなります。
抗がん剤治療中のもろい爪には、目の細かい180〜240グリット程度のものがおすすめです。力を入れずにやさしく削れるものを選びましょう。

爪の欠け・割れを予防！「爪にやさしいネイル保護コート」

爪にやさしいネイル保護コート

爪の保護コートは、爪の表面に膜を作ることで、物理的な強度を高めてくれるアイテムです。
とくに爪が薄くなったり、二枚爪になったりしている場合に効果的で、爪の表面や色をきれいに見せるだけでなく、乾燥や刺激からも守ってくれます。マニキュアのベースコートなどでも代用できますが、抗がん剤治療中はニオイが気になる場合もあるので注意が必要です。
選ぶ際は「薄くて弱くなっている」「乾燥している」など、爪の状態に合わせて選ぶと良いでしょう。また、1度塗りでなく何回か重ねて塗ることで、カバー力がアップします。

爪の保湿に！「新爪まわりの保湿オイル」

新爪まわりの保湿オイル

爪まわりの保湿にはクリームやローションも有効ですが、ネイルオイルは浸透力が高く、爪と甘皮にうるおいをしっかり届けてくれます。
スヴェンソンの「新爪まわりの保湿オイル」は、植物由来のオイルを配合し、デリケートな爪周りをやさしく保湿。持ち運びに便利なペンタイプなので、日中乾燥が気になった時にサッとケアできるのも嬉しいポイントです。