Masselでもとくに多くの方に読まれてきた、治療中の患者さんを追ったライフスタイル密着取材。治療をしながらの過ごし方や愛用品について教えていただきました。その後はどのように生活されているのだろう?治療を経てどんな気持ちの変化があったのだろう?
今回は仕事もプライベートもアクティブに楽しむ姿が印象的だったSANAEさんにお話しを伺いました。
プロフィール
SANAEさん(72歳) 東京都
〔家族構成〕夫と2人暮らし
〔がんの部位〕子宮がん(2012年)・リンパ腫(2015年)
〔治療の経緯〕内視鏡手術(子宮がん)→抗がん剤(リンパ腫)→経過観察中
つけまつ毛の相談をしたあの頃
私は子宮がん、リンパ腫、と2回がんを経験しているんですけど前回の取材はリンパ腫の後ですね。
リンパ腫という病気を見つけるまでは具合が悪くて仕方ないのに、なかなか原因がわからなくて。ようやく信頼できる先生に出会え見つけてもらえたんです。
抗がん剤は本当によく効いて、1回目の治療をしたとたんにさーっと痛みがひいて。こんなにラクになるんだ?!って驚きました。吐き気とかどこかが痛いという副作用はなく、爪が真っ黒になったのと、髪の毛がなくなったくらいでした。
髪の毛が抜けることは…やはりつらかった。鏡を見るだけでため息が出ちゃうくらい。でも、スヴェンソンのサロンでは、家でもかぶっていたニット帽をするっとはずせて、全然気にしないで過ごせたんです。私に似合うようにウィッグもカットしてくださったし、自分が素になれる場所としていろんな話ができてとても心強かった。
髪だけじゃなくまつ毛も抜けると聞いて、それはどうすればいいの?と相談したら、つけまつ毛を教えてくださいました。強い薬剤を使えないから、医療用のタイプ。本当にお世話になりました。今日、こうして取材をスヴェンソンさんのサロンで受けるのは感慨深いですね。
減った体重を戻そうとして15kg増!そして…
いま、体の調子は…とてもいいですね。疲れやすいとか、具合が悪くなりやすい、とかもない。ありがたいです。強いていえば足の親指のしびれが残っているくらいでしょうか。治療直後は手指のこわばりとか、ボタンがとめづらいとか、転びやすいとかあったけど、いまは大丈夫です。でも足の指のしびれはずーっと残っていて、なんとなく気持ち悪い感じ。まぁ、それだけですね。
ただ治療のときはとても痩せてしまって。その後戻さなきゃと、せっせと食べたんです。3食しっかり朝、昼、晩、きちんと食べる、そして飲む!そうしたら、にっちもさっちもいかないくらいふっくらしてしまって15kgくらい増えてしまいました。そりゃ重いですよ。
それで今度は体操を始めました。夜、寝る前に30分ほどヨガとストレッチ。そして朝は10~15分くらいテレビ体操。それをしっかりやったんです。毎日。そうしたら自然と戻りました。
それと1日4,000~5,000歩くらい歩こう、と決めました。通勤しない日はその歩数は稼げないので、家の周りをあるくんです。
5年前の取材でもお話しましたが、いまでも夫と近くの公園まであるいて行って、ランチすることは続けています。おいなりさんとか、おにぎりとか、唐揚とか、お漬物とか、手作りのお弁当を持って行くんですよ。あと、水筒にお水を入れてお酒とビールも持って行きます。景色を眺めながらお酒をちょっと飲んで帰ってくる。これが楽しいの!笑
いまの仕事がいちばん楽しい
仕事は前回の取材時と同じ会社で、変わりなく働いています。いまは半分リモートだから体がとてもラク。週4日働いてるけど、2日は出社して2日はリモート。これまでいろんな仕事をやってきたけど、いまの仕事がいちばん楽しいです。
日本には各地域で美味しいもの、ストーリー性のある食品を作っている人がたくさんいます。その人たちと一緒に企画を考え、売り先を見つけていく。彼らを世の中とつなげ、応援していく仕事。地域とのつながりもいっぱいできて、「ああ、これは私の天職かもしれない」と思いながらやっています。いまね、四万十川流域の農業プロジェクトで、四国の人たちと栗を植えるところからやってるんですよ。
人生の断捨離を決行
2回がんを経験して人生の断捨離を行いました。とくに1回目のがんの後「自分の人生には限りがある」ということに気づいて。それまではいろんな人に会ったり、会に出席したりしてたんですけど、こんなふうに八方美人にしていてはダメだ、と感じました。
自分が本当にやりたいことは何だろう?会いたい人は誰だろう?って考えたんですよね。それで、あ、この人尊敬できる、この人大好き、この人とはずっとお話ししていたい、そういう人だけに会うことにしました。
時間が限られてるので誰と会うか、誰と過ごすかは大事。いまは会いたい人に会えない、というのがつらいけど…。
コロナ禍での暮らしと新しい趣味?!
コロナ禍で気をつけていることは手洗い、消毒、マスク、外では飲食をなるべくしないことかな。仕事に行くときもお弁当持って行っています。それと同居している人間と以外、できるだけ会わないようにしています。本当は孫たちとも会いたいけど、いまはちょっと我慢が続いています。
バンドをやっていたんだけど、メンバーとも3年以上会ってない。みんな年齢が高いこともあるし、練習はせまいスタジオで声を出さなきゃいけないから、やっぱり怖くて集まれない。たまーにラインで元気?ってやりとりするくらい。バンドができないのがとても残念ですね。
バンドができない時間はだいたい散歩。あるく、そして飲む。笑
でもそんなに量は飲まないの。お酒なら1合、ビールならグラス2杯くらい。以前は家で飲むことはなかったけど、コロナ禍で付き合いも減って家飲みがはじまり、それが楽しくて。今日は「居酒屋メニューね」とか「今日はイタリアン」とか、料理のテーマにあわせてお酒を選ぶの。
あれ?これって…新しい趣味かな?笑
10年前の自分に伝えたいこと
「あんたはえらい!!」と言いたいですね。
通院治療とか、点滴しながらお昼食べたりすることとか、誰も経験できないことだと思って、状況を前向きに捉えていた自分を褒めたい。
病名を知らされたときは「私、生き残れるんだろうか?」と本気で思ったけど、今の医学というのはどんどん進歩していて、治ることの希望の方が大きかった。先生と話したり、治療するうちに希望がしっかり見えてきて「私、ちゃんと治っていくんだ」って思えた。
だからいま、すごく悩んでいる方には何の役にも立たない言葉かもしれないけど「そんなに悩まなくて大丈夫」と言いたい。短い時間の人もいれば、時間がかかる人もいるけど、治療しているわけだから必ずいい方向へ向かって行く。
最近、中学二年になる孫が、学校の授業でどんな人になりたいか、どんな仕事がしたいか聞かれて「おばあちゃんみたいな人になりたい」って言ったんだって。理由は、モデル、歌手、代議士秘書、議員、今の仕事…といろいろ挑戦して、いきいきと暮らしているから、だそうです(笑)
「自分らしく生きる」って言ったって難しいし、探して見つかるものでもないけど、歩んできた人生がこうして繋がっていくのは嬉しいものですね。自分がこの世に生を受けた意味と幸せを感じた出来事でした。
(過去記事リンク)
SANAEさんにはじめてご登場いただいたときの記事はコチラ