薬局でお薬をもらうとき、受付や問診表で「ジェネリック医薬品にしますか?」と聞かれた経験がある方も多いのではないでしょうか。費用が抑えられることはなんとなく知っていても、普通の医薬品とジェネリック医薬品ではどんな違いがあるのでしょうか。今さら聞けないお薬のこと、薬剤師が解説します。
ジェネリック医薬品って、そもそも何?
薬局やテレビCMでも放送されることもある「ジェネリック医薬品」は、厚生労働省も使用を推進しており、今や「すべての都道府県でジェネリック医薬品の使用率を80%以上にすること」を目標としています。
●先発医薬品と同じ成分
ジェネリック医薬品は、製薬会社が先発医薬品(新薬)を販売してから、一定の年数がたった後に販売されます。そのため、ジェネリック医薬品は後発医薬品とも呼ばれますが、先発医薬品と同じ有効成分を同じ量含んでいます。
●費用が抑えられている理由
先発医薬品(新薬)は、製薬会社が10年以上の歳月と、数百億円以上の費用をかけて開発されます。そのため、発売時には特許を出願して薬を独占的に販売することでコストを回収します。
特許は一定期間をすぎると国民の共有財産となり、他の製薬会社も製造、販売が可能になります。こうして生まれるジェネリック医薬品(後発医薬品)は、先発医薬品に比べて開発期間や費用が少ないため、安価で販売できるのです。
●治療効果が同じで、安全であることが確認されている
ジェネリック医薬品を製造する際には、「生物学的同等性試験」で承認を受ける必要があります。とくに飲み薬については、服用する人の体調や体質、医薬品の吸収、代謝などさまざまな影響を受けるため、試験で血中濃度を測定し、治療効果の同等性と安全域を設定しています。
実際に販売されているジェネリック医薬品のデータを検証したところ、先発医薬品と血中濃度に差はほとんどなかったと報告されています。
●ジェネリック医薬品の使用が増えている
ジェネリック医薬品は安価で販売でき、治療を必要とする患者さんの負担を軽減することができます。
厚生労働省は、こうした患者さんの負担の軽減や、国の医療保険財政の改善に期待して普及を進めており、令和4年9月までに全国のジェネリック医薬品のシェア率は79.0%になっています。
抗がん剤にもジェネリック医薬品が存在する
抗がん剤にも、通常の医薬品と同様にジェネリック医薬品が販売されていることがあります。ジェネリック医薬品は、先発医薬品に比べると価格が5〜7割ほど抑えられ、先発医薬品にはない工夫がされていることもあります。
●高額な治療費を抑えられる
乳がんなどの女性特有のがんに対して行われる「ホルモン療法」は、5〜10年と治療が長期間続くこともあります。
例えば、乳がんに対してよく使われるタモキシフェンクエン酸塩錠20mg(先発医薬品ノルバデックス錠20mg)は、2023年6月現在で先発医薬品だと1錠96.3円、ジェネリック医薬品だと34.2円です。
単純な薬剤費の比較であり、保険医療の負担割合などによって金額は変化しますが、高額な薬剤を使った治療ほどジェネリック医薬品の経済的メリットは大きくなります。
●先発医薬品にはない工夫がされている場合もある
先にお伝えしたように、先発医薬品とジェネリック医薬品は有効成分や配合量が同じであるため、副作用の出現率なども同等。つまり「ジェネリック医薬品だから副作用が軽い(もしくは重い)」ということは、ほぼありません。
しかし、これまでに治療してきた患者さんはもちろん、医師・薬剤師・看護師など医療従事者の声を生かし、さまざまな工夫も凝らしています。コーティングをして苦味を軽減したり、錠剤を小さくして飲み込みやすくしているメーカーもあります。逆にジェネリック医薬品に切り替えた場合、飲み慣れていた薬の形状が変わってしまうケースもあるので注意しましょう。
ジェネリック医薬品は添加物や形が異なることも
ジェネリック医薬品は、先発医薬品に比べると費用を抑えられるメリットもありますが、全てが先発医薬品と同じではありません。
ジェネリック医薬品は、先発医薬品の有効成分と配合量、効能効果が同等であることが必須ですが、添加物や形、味などは違うことがあります。基本的に医薬品で使われる添加物は安全性が保証されており、有効成分の治療効果を妨げるものは採用されていません。
しかし、添加物の変化によってアレルギーが出る可能性もあります。添加物のなかには、とうもろこしデンプンや乳糖などの食品を材料としたものが存在し、特定のアレルギーがある場合は先発医薬品、ジェネリック医薬品の種類に関係なく注意が必要です。
がん治療は長期間続くことが多く、治療費も高額になる傾向があり、薬代を抑えられるジェネリック医薬品への変更は、経済的なメリットがあります。ジェネリック医薬品について気になることがあれば薬局で聞いてみてくださいね。
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