~ がん患者さんの生活に役立つ情報 ~

Massel

~ がん患者さんの生活に役立つ情報 ~

名医の診察室 福井済生会病院 宗本義則 医師<前編>

お気に入り

信念をもって仕事に向き合い患者さんのために行動する、そんな名医を訪ねてお話を伺う『名医の診察室』。今回お話を伺った福井済生会病院の宗本義則先生は、診療科を越え、各分野の専門職が協力して治療を行う「集学的がん診療センター」を開設。2022年には「がん哲学外来」2代目理事長に就任されました。前編では、患者さんのために病院内外で活動するキッカケを紐解きます。

「いい診療」のために大切な、3つのこと

医師になった頃は、がんの進行度や、がんがどういう顔つきをしているかなど、病気のことにフォーカスを絞った診療をしていました。治療が最優先なので当然のことですが、ある程度の年齢や経験を重ねていくうちに、それだけではダメだということに気づきました。
手術や治療後も、患者さんお一人おひとりの生活は続きます。そういう意味で「肉体的」「精神的」そして「社会的」と、広い範囲で患者さんを診ていくことが非常に大切。この3つすべてが整わないと、いい診療はできないと思っています。

家族全員で手をつなぐ

たとえば「肉体的」というのは、がんの痛みです。痛みの有無や強弱、食事が摂れるかどうか。そういうことは当然重要になってきます。
次に「精神的」なこと。がんに罹患すると心配ごとは増えます。病気のこと、お金のこと、家族のこと、将来が見えてこないということもあると思います。
そして「社会的」なこと。それはその方が社会の中でどういった人生を過ごしてきたのか、そしてがんを体験し、これからどのように過ごしていきたいと考えているか。この3つを診療の場で常に考えています。

宗本義則先生

とくに、身体の治療が最優先な医療現場において後回しにされがちな精神的なこと、社会的なことに関しては、自分が率先して患者さんに聞くことで、周りのスタッフにも重要性を理解してもらっています。医師の私だけではなく、患者さんには看護師さんやソーシャルワーカーさんなどを含めたチームで関わりますから。意識を共有することがとても大事です。

集学的がん診療センターはどういうところ?

集学的って、なかなか聞き慣れない言葉ですよね。これは主に医療の世界で使われている用語で、専門分野の異なるスタッフが集まり、チームとなって行う治療のことをいいます。もともとは内科、外科、放射線などでチームを作り、医師や診療科の連携に対して「集学的」という言葉を使っていました。

集学的がん診療センター

しかし治療以外の悩み、たとえばお金のことを相談したいとき、患者さんがあちこち回って必要な情報を集めるのはとても大変です。なので、医師だけでなく看護師、薬剤師、栄養士、ソーシャルワーカーなどさまざまな職種のプロフェッショナルが一体となって患者さんを診れる場所にしたい、という思いで集学的がん診療センターを立ち上げました。「何か心配事があったときセンターへ行けば、ほぼ解決する」がコンセプトです。

集学的がん診療センターではどんな相談できる?

集学的がん診療センターには、実にいろいろな相談が寄せられます。多いのはお金のことですが、治療に関してセカンドオピニオンの相談や、抗がん剤を使う場合、副作用としておこる脱毛のことなど相談に来られる方もいらっしゃいます。見た目の変化にともなうケアは社会生活を送るうえで患者さんは気にしますし、治療を継続していくモチベーションの意味でも重要になってきます。

ハート

抗がん剤治療をする前のタイミングで来られる方が多いですね。
お金はこのくらいかかって、制度や保険でこのくらい医療費がカバーできて、外見の変化が起こった場合はこういうサポートがあって…というように、治療前に患者さんに納得してもらった上で、治療を開始。そのあとは、なるべく副作用を和らげるような予防や対策を行いながら、ウィッグやカバーメイクなどの必要に応じた外見ケアを紹介するようにしています。
何よりも、患者さんが治療を続けられるようにする。それが患者さんにとってプラスになりますし、前段でお話したようないい診療に結びつくことを目標に活動しています。

後編は後日公開です

(プロフィール)
宗本義則 医師
福井済生会病院 集学的がん診療センター顧問。長年外科医としてがん患者に向き合うなか、社会的サポートの重要性に気づきチーム医療を集約した集学的がんセンターを発足。院内に初めてハローワークを設置するなど「治療しながら当たり前に生きていく」活動を全力で推進している。2022年、がん哲学外来2代目理事長に就任。

人気記事ランキング

特集