
【看護師監修】がん治療中は貧血になる?食事と暮らしのヒント
がん治療中は貧血になりやすく、疲れやすさや息切れなどを感じることがあります。
とくに、春は気温や生活環境の変化によって、心身にストレスがかかる時期でもありますよね。
体調を整え少しでも快適に過ごすために、日常生活で取り入れやすい食事や暮らしのヒントをご紹介します。
がん治療と貧血の関係
女性とは馴染みが深い貧血の症状。
貧血とは、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンの量が減少した状態です。ヘモグロビンは酸素を全身に運ぶ役割を担っているため、貧血になると体内の酸素が不足し、倦怠感や動悸や息切れなどの症状が現れます。

がん治療中は、治療をしていないときよりも、貧血を引き起こしやすくなります。
ヘモグロビンが含まれている赤血球自体が、がん治療の影響で減少しやすくなるためです。貧血が進むと体に十分な酸素が行き渡らなくなり、疲れやすさやめまいなどの症状が現れます。
日常生活に影響を与えることもあるため、早めの対策を心がけ、食事や生活習慣を整えましょう。
がん治療中に貧血が起きやすい主な原因
ここでは、がん治療中に貧血が起こりやすい原因について解説します。
1.抗がん剤や放射線治療による骨髄機能の低下

抗がん剤や放射線治療はがん細胞を攻撃する一方で、正常な細胞にも影響を及ぼします。
とくに、血液をつくる骨髄がダメージを受けると、新しい赤血球の産生が抑えられ、貧血を引き起こしやすくなります。
がん治療による骨髄抑制は、一時的なものから長期にわたるものまでさまざまです。がん治療が終了すれば骨髄の機能は徐々に回復し、赤血球の量も正常に戻ることが多いですが、患者さんの体調や年齢、抗がん剤の種類、投与の機関などによって回復する期間に差があります。治療後も定期的な血液検査を受けながら、主治医と様子を見ていきましょう。
2.食欲不振による栄養不足

がん治療中は副作用によって食欲が低下したり、吐き気や味覚の変化が起こる場合があります。食事量が減ることから栄養素が不足し、貧血が進む場合があるため、注意が必要です。
とくに、鉄分を多く含む食品や鉄分の吸収を助けるビタミンCを含む食品を十分に摂取できないと、貧血のリスクが高まります。
3.がん自体による影響

がん細胞は正常な細胞よりも速いスピードで増殖するため、多くのエネルギーや栄養素を必要とします。そのため、身体が栄養不足になり貧血が起こりやすくなるのです。
また、胃がんや大腸がんなどは、がんのある部位から少しずつ出血が続くことがあります。慢性的な出血によって鉄分が失われ、鉄欠乏性貧血を起こす場合もあります。
貧血の主な症状チェック
貧血が進行すると、次のような日常生活に影響を及ぼす症状が現れることがあります。
- 疲れやすい
- だるさを感じる
- 動悸や息切れが起こる
- めまいや立ちくらみがある
- 顔色が青白くなる
- 食欲不振や吐き気がある
- 集中力が低下する
症状が続く場合は、主治医に相談しましょう。
生活習慣を見直して工夫できる貧血対策
ここでは、生活習慣を見直して工夫できる貧血対策についてご紹介します。
★タンパク質や鉄分を含む食品を摂取する

貧血の予防や対策には、バランスのとれた食事を心がけることが大切です。
とくに、赤血球の材料となるタンパク質や鉄分を意識的に摂取するとよいでしょう。
- タンパク質を多く含む食品:卵、肉、魚、乳製品、大豆製品など
- 鉄分を多く含む食品:赤身の肉、レバー、小松菜など
- 鉄分の吸収率を促すビタミンCを多く含む食品:柑橘類、ピーマン、ブロッコリーなど
がん治療中は食欲が落ちることがあるため、スープや煮込み料理にして食べやすくするのがおすすめです。
たとえば、手羽元と小松菜の煮びたしは鉄分とタンパク質のバランスもよく、レンジで簡単にできる一品です。作り方は「若菜まりえのパパッと一品! 5月は手羽元と小松菜の煮びたし」をご覧ください。
ただし、貧血の原因によっては鉄分の摂取だけでは改善しない場合もあるため、まずは主治医に相談しましょう。
★手足のマッサージやストレッチを行う

貧血の症状があると体がだるくなり、動くのが億劫になることもあります。
軽いマッサージやストレッチは、筋肉の緊張をほぐし血流を促進するため、貧血による倦怠感の軽減に役立つとされています。
また、体調がよいときに、ウォーキングなど軽い運動を取り入れてみてもよいでしょう。運動を始める時期や強度については、主治医とも相談しながら行ってください。
★こまめに休息する

貧血の症状が出やすいときは、こまめに休息をとることが大切です。
疲れを感じたら、無理せずリラックスする時間を確保しましょう。
- 帰宅後や入浴後、食後にひと休みする
- 昼寝は夜の睡眠に影響しないように20~30分程度にする
- 横になれないときは、座って深呼吸してみる
リラックスすることで自律神経が整い、疲労の回復につながります。睡眠の質を上げることも貧血の症状をやわらげるポイントです。
サプリメントや市販薬とのつきあい方
がん治療中の貧血の原因はさまざまで、すべてが鉄分不足によるものではありません。
自己判断や周囲からの勧めによるサプリメントや市販薬の服用は鉄の過剰摂取につながり、便秘や下痢などの消化器症状や肝機能障害を引き起こす場合もあります。

鉄分を補うだけでは改善しない炎症性貧血(がんや慢性炎症による貧血)などもあるため、必ず主治医や薬剤師に相談してください。
いかがでしたか?
貧血と上手につきあうためには、食事や生活習慣の工夫が大切です。
無理のない範囲で取り入れながら、変化の多い春先の体調を整えましょう。ご自身に合ったケアを見つけ、少しでも快適に過ごせることを願っています。

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