広島大学病院の舛本法生 先生が乳がん専門医を選んだ理由、そして診察室から街へ出てはじめられた活動について、前半はお届けしました。後半はさらに乳がんアカデミアや、ひろしまウィッグマップなど舛本先生が取り組んでいらっしゃること、そして治療への思いに迫ります。
医療従事者が立ち上げた、
ひろしまピンクリボンプロジェクト
ひろしまピンクリボンプロジェクトは、2011年から活動をはじめ、2016年にNPO法人化されたひろしまのピンクリボン活動です。乳がんのことをもっと知っていただくために、医療従事者が中心となって立ち上げました。先ほどお話したまちなかリボンサロンもその一つですが、患者さん同士のコミュニティの創出、乳がんについての知識を深めるための講演、さらに啓蒙も兼ねて年に1回500名規模の勉強会「ひろしま乳がんアカデミア」も開催しています。
講演内容は、乳がんって何?といった初歩的なことから、予防や検診に関する情報、治療や手術のメリットデメリット、手術前の胸の形に近づける乳房再建について、治療中~後の心のケア、生活での注意点、最新治療など、内容は多岐にわたります。昨年は患者さん自身の体験談もお話していただきました。患者さん本人はもちろん、ご家族や一般の方に、楽しく、わかりやすく乳がんのことを理解していただければと思います。講演は県内の病院に勤務する専門医や専門家が行い、サロンと同じくボランティアで参加していただいています。
昨年の開催の模様は、動画で観ることができますので、ぜひご覧になってみてください。次回は2020年10月18日(日)に広島国際会議場で開催予定です。
やはり多い「脱毛」の相談
ウィッグマップをつくった理由
抗がん剤治療をするうえで患者さんが心配になることのひとつとして、「脱毛」があります。脱毛の悩みは大きく、ウィッグを必要とされる方がたくさんいらっしゃいます。普段の診察室でも患者さんから、ウィッグの購入場所や価格、脱毛したときの生活や対処法などの質問を受けます。そこでひろしまピンクリボンプロジェクトでは、これから脱毛を伴う抗がん剤治療をおこなわれる方が、少しでも多くの選択肢の中から自分に合ったウィッグを選ぶことができるよう、医療従事者とサロンのボランティアスタッフでウィッグ マッププロジェクトを発足。脱毛に関する情報誌 ひろしまウィッグマップを発行しました。広島県内の拠点病院のがん相談支援センターなどを通じて設置・配布しています。
ウィッグマップにはウィッグの種類や選び方、購入できるお店、お手入れ方法などはもちろん、脱毛のしくみや脱毛時の頭皮ケアの情報も入れ、患者さんのライフスタイルを考えてつくりました。この冊子は患者さんからも「大変役に立った」「わかりやすかった」「安心できた」との声をいただき、好評でした。ひろしまウィッグマップ以外にも、副作用に関する情報と対処法をまとめた副作用ガイドブックや、乳房再建術や術後の下着、補正用品に関する情報をまとめた情報誌おしゃれに過ごしたいも発行しています。少しでも治療をするうえでの参考になれば幸いです。
診察室で「できること」と
診察室を出て「できること」
診察室では、なるべく相談しやすい雰囲気、患者さんが本音を話しやすい雰囲気をつくることを心がけてきました。お一人おひとりの生活は異なり、心配ごとや不安も違ってきますので、患者さんとご家族が最も希望する治療を選択ができるようにサポートしていきます。治療中はもちろん、治療後の生活においても、日常生活が変わらないのが一番いいですよね。働き盛りにがんに罹患し、退職を考える方も多いと思うのですが、できる限りお仕事を続けていただければと思います。がん治療中もお仕事を続けることが、社会からの理解を得られ、制度や保障もきちんと整っていくことを願っています。
乳がんに関する情報発信のために乳腺外科の後輩、笹田先生の発案で広島大学乳腺外科のブログを1年半前に始めました。乳腺外科の医師8名が順番に、毎日更新しています。患者さんからの質問やがん治療の最新情報を綴ることもあれば、自身のペットのことや美味しいものを食べて幸せだったことなど、日々感じたことを綴っています。
我々にできることは病院外、診察室の外にもありますから、そういう社会に近づくために、できることは何でもやっていきたい。医療とともに一歩いっぽ進んでいければと思います。
舛本先生プロフィール
広島大学病院 乳腺外科診療講師。2007年より同病院勤務。2011年まちなかリボンサロン(現・NPO法人ひろしまピンクリボンプロジェクト)の立ち上げに参加。院外で患者さんに寄り添う活動を続けている。