市民公開シンポジウム

がん哲学外来

~ 純度の高い専門性と丁寧な大局観 ~

2016年4月16日(土)に開催されたレポートと動画を公開中。

第1部 開会挨拶

株式会社スヴェンソン 代表取締役社長
兒玉 義則
医師・看護師・ボランティアの方々に支えられ、弊社サロンをがん哲学外来メディカルカフェ開催場所として提供させていただき、今年で4年になります。二人に一人ががんにかかる時代、より一層対話の場を広げる活動を、企業としてサポートしてまいります。
第1部 基調講演

埼玉医科大学国際医療センター 精神腫瘍科 教授
精神保健指定医 日本精神神経学会専門医
大西 秀樹
『がん患者さんと関わるために ~私たちができること~』

「がん」という言葉を聞いて皆さん何を感じるでしょうか。医療者では「慢性疾患」だという人もいらっしゃいます。しかし、告知を受けた患者さんの2人に1人が精神疾患と診断されます。人は何か悪い知らせがあると2週間判断力が落ち、その後更に2週間経ち元の生活に戻るというのが半数の方がとる正常反応です。残りの半数の方は適応障害か鬱病になります。この鬱状態によって『治療をする』『しない』という意思決定が左右されることもありますし、精神的な判断に大きく影響します。医療者が患者に病状説明をする時は、水戸黄門の印籠みたいにべらべら話をして、その印籠の中に毒が入っていて患者が苦しんでしまう。僕は、医療者は喋らず、やっぱり聞くことが大事だと思います。そして一個一個、問題を一緒に整理して対応を考えて書き出してみる。これが一番わかるのは『ニーバーの祈り』の言葉にある「変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気を与えてください。変えることのできないものについては、それを受け入れるだけの冷静さを与えてください、そして変えることのできるものとできないものを見分ける知恵を与えてください」。私たちはこのお手伝いをする。がんは勝ち負けではなく「負ける」と思った気持ちの本当の意味は何なのか、それを一緒に考えること、人間の心は成長するものなのです。

東海大学医学部  血液・腫瘍内科教授
がん幹細胞研究センター長 銀座メディカルカフェ顧問
安藤 潔
以前は本人にがんであることを告知しませんでしたが、この20年で告知する時代になりました。しかし、その患者さんを周りが支える社会の仕組みがまだ整えられていないように思います。「言葉にすることの大切さ」は、死生観を考えることにつながり、「死を考える」ことは、生きている意味を考えることにつながります。患者さん・ご家族がそのような話をできる場所として、「がん哲学外来」があると思います。2025年には75歳以上の方が人口の多くを占める時代が訪れる中、日本人にとって死生観を考えることはますます大切になってくると思います。
第2部 パネルディスカッション 『純度の高い専門性 ~ 美容哲学 ~』

ファッションデザイナー
コシノ ジュンコ
健康な時には健康に気が付かないし、病気になると途端に考え方が変わる。今日に感謝することが大事です。将来から見ると今日が一番若いですし、一番元気です。私は友人である、がんを公表された『なかにし礼』さんから、今を大切に生きる姿を感じました。
エッセイスト・ノンフィクション作家
桐島 洋子
体の調子が悪くなってきても、それは人生が成長している証で、悪くない事だと感じます。がんというのは養老のある哲学的な病気だと思います。
人財育成・開発コンサルタント
里岡 美津奈
私は41歳の時、乳がんで右の乳房を全摘出しました。色々な経過を経て今があり、「死」というものを意識して生きる喜びを知りました。告知を受けたとき「これは私の人生の1ページにおきた出来事であって、誰が悪いわけでもない。だから受け入れます」と言えた。普段から自分の意志を持って決めること、価値観をしっかり持っていることが重要で、私はそこに助けられたと思います。
資生堂 ライフクオリティー ビューティーセンター
Makeup Carist
澤田 保子
肌や外見上に深いお悩みがあると、人は社会との関わりに消極的になってしまいます。化粧で外見をととのえることで元の自分を取り戻し、笑顔になっていただくよう、化粧を通じて社会復帰をお手伝いしていきたい。
関東労災病院 外科部長
川崎駅前 がん哲学外来・カフェ 世話人
秀村 晃生
医療者やご家族、そして企業がそれぞれに患者に寄り添うこと、それががん哲学外来の担うべきことだと思います。
株式会社スヴェンソン 東日本エリアマネージャー
根岸 ゆきえ
がん哲学外来カフェをサポートする企業として、もっと患者様・医療者様に利用いただき、この輪が広がっていくと嬉しく思います。
総括 閉会挨拶

順天堂大学医学部 病理・腫瘍学教授 医学博士
一般社団法人 がん哲学外来理事長
樋野 興夫
「心配するのは1日1時間でいい」、この意味わかりますか?人間本当に心配をする時は、一人部屋に閉じこもって心配するんですよ。この習慣は良いことです。何かに困ったとき相談したり理解してほしいとアクションをとっていてはダメだね。一人静かに、1日1時間部屋に閉じこもることです。大変なことですよ。人間は人生に期待をするから、失望するんです。人生から期待されていると思わないと。どんな人にも役割や使命があって、その役割に気づけば『人生から期待される』。人と比較してはだめです。みんなジェラシーとか、人との比較で悩んでいる。人間は苦しみを通して忍耐を身につけ、忍耐が生ずると品性が出ます。品性が出ると、本当の希望が与えられます。何が良いか、悪いかはわからないよ。もしかすると、この時のために人生があるから。