アピアランスケアとは、がん治療に伴う外見の変化に悩む患者さんの心身の苦痛を和らげ、自分らしく生活できるよう支えるケアです。心身ともに大きな負担がかかるがん治療において、患者さんが治療に専念できるよう、また治療中も出来る限り不安なく社会と関わりを持ちながら生活していけるよう支える、重要な役割を果たします。アピアランスケアは、カモフラージュメイクや脱毛のカバーなどの美容的側面のみならず、医療者が外見の相談などで患者さんに介在することで患者さんの安心に繋がり、さらに外見変化をはじめとした生活の不安を感じた際は、いつでも医療者に相談していいのだというメッセージを送ることにもなります。
アピアランスケアとは
アピアランスケアとは何ですか?
どのような患者さんが対象となりますか?
アピアランスケアの対象となる患者さんは、がん治療に伴い外見の変化が生じ、その変化によって身体的・心理的・社会的な困難を抱えている方です。脱毛をはじめ、爪・皮膚や体型の変化、手術による傷跡など、外見の変化の程度は関係ありません。些細な変化であっても、患者さんにとって大きな悩みになっている場合は、アピアランスケアの対象となります。
外見変化への対処方法を教えてください。
代表的な変化としては、脱毛、皮膚の変化、爪の変化、手足のむくみ、傷跡などがあります。医療用ウィッグの着用をはじめ、外見変化によっての様々な対処法を提案しています。詳しくはこちらをご覧ください。
サポートについて
患者さんへの心理的サポートはどのように行うべきですか?
患者さんの話をじっくりと聞き、共感を示すことが大切です。外見変化に対する不安や悩み、葛藤などを丁寧に受け止め、患者さんのペースに合わせながら話を聞くことが重要です。ただし、患者さんががんそのものを受容していない段階で、表面的に外見変化の不安を口にする場合があります。この場合、具体的な対処方法などを考えるような余裕はなく、アドバイスも耳に入らない状態です。多くの患者さんは時期はまちまちでも、いずれ適応に向かいますので、受容した段階からがアピアランスケアを含む心理的サポートの介入時期ではないでしょうか。また、必要に応じてカウンセリングや腫瘍精神科に繋ぐこともひとつです。
ご家族へのサポートはどのように行ったらよいですか?
家族や友人などで手助けをしてくれる人物がいることは、とても大切です。患者さんとともに説明や面談に立ち会ってもらい、本人が実行できる方法を一緒に考えたり、家族のサポートで実現できることを探したりすることが、患者さん本人の利益に繋がります。スヴェンソンのお客様のなかに、患者さんは家族に負担がかかることを気にして要望を言い出せず、ご家族は本人の元気が無いことが気になるがどうしていいか分からなかった、というケースがありました。こういった場合、医療者が間に入って本音を聞き出し、家族間の相互理解を深めるという役割を果たすのもひとつです。また、特に男性患者さんの場合、脱毛などの外見変化を気にしていると周囲に思われたくなく、不安を表に出さない人が多いようです。こうした場合、ご家族にアピアランスケアに関する情報を渡しておくという方法もあります。
職場や学校での理解を得るためにどのようなサポートができますか?
職場や学校での理解を得ることは、患者さんが安心して療養生活を送るために重要です。特に治療により外見の変化を伴う場合、周囲に知られて余計な心配をされるのではないか、との不安を抱くものです。上司などに状況を理解しておいてもらえると、様々な配慮をしてもらえたり、仕事上の不安ごとについて相談しやすくなります。職場全ての人に病気について知らせる必要はないが、信頼のおける上司などには状況の説明をしておいた方がよいのでは、との提案をしてあげてはどうでしょう。また、がん相談支援センターのソーシャルワーカーや、がん患者の就労支援に携わっている社会保険労務士に繋ぐのも方法のひとつです。治療中もウィッグを着けて仕事をしている人は沢山おり、スヴェンソンのお客様からは「職場でウィッグと気付かれなかった」「スタイルチェンジしたの?素敵ねと言ってもらえた」とのお声をよく聞きます。こうした体験者のお声を伝えてあげるのも、勇気につながります。
医療現場にて
アピアランスケアに関する研修や情報はどこで得られますか?
アピアランスケアを病院やクリニックに導入するためのステップを教えてください。必要な体制はありますか?
病院の体制や事情により異なります。様々な規模、経営形態の病院のアピアランスケア取り組み事例をこのサイト内にて紹介しておりますので、こちらをご覧ください。
患者さんに渡せるアピアランスケアに関する資料はありますか
スヴェンソンが発行している、「脱毛・外見ケアマニュアル」という冊子があります。
こちらは、がん治療におけるアピアランスケアガイドライン作成委員のおひとりである齊藤典充先生(なごみ皮ふ科)が監修してくださっているもので、脱毛ケア、カバーメイク、爪のケアについての情報を掲載しております。全国のがん治療に関わる医療機関に提供し、ご活用いただいております。冊子をご希望の方はこちらよりご連絡ください。
ウィッグについて
ウィッグの価格を教えてください
市場には、数千円~数十万円と、様々な価格帯のウィッグがあります。ウィッグの種類別の大まかな金額が、既製品タイプが数千円~10万円台、セミオーダータイプが8万円~30万円台、フルオーダータイプが30万円~80万円台となっています。その人によって、好み、こだわり、サイズなどが異なるため、安価なものが良い、高価なものが良いなど、一概に決めつけることは出来ません。ウィッグというアイテムを使うのははじめてという方も多いため、予算感はもちろん、自分が納得して使えるものを比較検討することが大事です。ウィッグに関する詳細な情報はこちらをご覧ください。
ウィッグの検討や購入はどの時期にしたらいいですか
治療方針の決定から治療までに余裕があるのであれば、治療前の検討をおススメします。①治療が始まると体調の変化で、納得のいくウィッグ選びをする気持ちの余裕がなくなる、②脱毛症状の出る前に自身のヘアスタイルをお店の相談員に見てもらうと、好みのウィッグを見つけやすい、などが理由としてあげられます。また、仕事を続けながら治療をする場合など、いつ脱毛前のヘアカットをしてウィッグに移行するかなど、計画的に進めることが出来ます。脱毛前のヘアカットをウィッグの準備と合わせて行ってくれるウィッグ専門店もあります。
ウィッグのお手入れについて教えてください
使用した後のお手入れは、①ほこりなどの汚れを取り除き、髪のもつれを取っておくブラッシング②ウィッグの内側のネットに専用の消臭スプレーをふるを行ってください。①は髪の痛みの原因となる静電気が起きやすいため、出来れば専用のブラシを使用し、ウィッグ用静電気防止スプレーを使用するといいです。また、ウィッグのシャンプーはご自身でも出来ます。10日~2週間使用したら一度洗います。洗い方についてはこちらをご覧ください。ウィッグのメンテナンスも行うお店で購入した場合には、何回かに一度、プロにシャンプーセットをしてもらうと、ウィッグに自然なツヤが戻り、きれいな状態を長期間維持できます。